若者のSOSに効果的?インターネット広告を活用した自殺対策について
こんばんは。大田区議会議員のおぎの稔です。先日の大田区議会予算特別委員会で、ライフワークである自殺対策、自死遺族支援について取り上げました。大田区の自殺対策が昨年からインターネット広告を活用した自殺対策の導入や自死遺族支援の事業化と大きく進んだことを皆様はご存知でしょうか?
大田区で自死遺族支援の予算化、インターネットGKも導入されました。
「自殺」、「死にたい」などの自殺に関連するワードを検索した方に対して、相談事業等を紹介する広告を表示するインターネット広告を活用した自殺対策(インターネットゲートキーパー)は、大田区からの答弁にあるように、昨年8月から今年の1月までの6か月間で広告が表示された回数が8万4891回で、月平均で1万4千回を超え、広告がクリックされた回数は、6か月間で4800回、月平均800回となりました。相談に繋がった方は、6か月間で77人、月平均13人弱。そのうち10代・20代は6か月間で45人と全体の6割弱を占めました。自殺対策基本法の議論でも、そして近年の自殺の傾向を見てもなかなか減らす事の出来なかった若年層の自殺について、そのアプローチの方法から対策する側は悩んでいたのですが、今回、若者向けに効果があった事が大田区という自治体の中ではありますが証明されたのではないでしょうか?また、非対面型の事業である為今回のようなコロナウイルス感染症の中でも、実施が出来ます。
先日、進め方や内容に批判や疑問が大きく寄せられる中で香川県でネット・ゲーム依存症対策条例が可決されました。その問題点については、私も何度ども取り上げさせていただきました。
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例への抗議声明
ゲーム時間利用制限は不要。大田区議会予算特別委員会質疑
ゲームやインターネット、スマートフォンなどのツールを一方的に悪いもの、不要なものと断じる姿勢そのものに私は相いれないと思っておりましたが、自殺対策の面で今までアプローチが難しかった若年層へのアクセスの効果的なことが数字面でも明らかになりました。若年層にとってネット、スマホ、ゲームは単なる遊び道具ではなく、社会や世界と繋がる為の手段であり、居場所であるのです。そこがその人にとって自分の唯一の居場所になっているかもしれないのに、インターネットやゲームを取り上げてしまう、またそうしたメッセージを行政が出してしまってよいのでしょうか?私は良いとは思いません。他の議員も区民相談や質問などの点でインターネット・SNSの活用を議会で訴えておりましたが、私自身も実際の結果も元に、ネット、SNSの行政の活用を今後も訴えていきたいと思います。
質問 中継
【インターネットGKについて】
【質問】
インターネット広告を活用した自殺対策として、23区では足立区が率先して開始した、インターネットGKの運用が大田区でも昨年8月から始まりました。私も区議会で導入を呼びかけてきた事もあり、今年度に実現した事を嬉しく思います。
自殺対策基本法の改正において、国において若年層の自殺者の減少が課題になっていましたが、非対面型の相談事業である本事業は、今回のようなコロナウイルス騒動の際も利用できることや若年層の相談需要にも合致している事もあり、ライフスタイルの多様化の中でこれから重要性がより増していくと考えます。
まず、今年度の実績、特徴について伺います。①
【答弁 概要】
昨年8月から開始したインターネットを活用した自殺防止相談事業は、区内で「死にたい」「自殺方法」等自殺に関するキーワードを検索した人のスマートフォン等の端末に相談を促す広告が表示され、その広告をクリックし、相談を希望した人に臨床心理士等がメール等で相談を受け、必要に応じて医療機関等への同行や家庭訪問を実施するものでございます。昨年8月から今年の1月までの6か月間で、自殺に関連するキーワードが検索され、相談を促す広告が表示された回数は84891回で、月平均で1万4千回を超えております。広告がクリックされた回数は、6か月間で4800回、月平均800回になります。そして、相談をされた人は、6か月間で77人、月平均13人弱でそのうち10代・20代は6か月間で45人と全体の6割弱を占めています。
比較的若い方は、従来の電話・面接等の相談にはつながりにくい傾向がありますが、親和性の高いICTを活用した点に本事業の特徴があり、実際に大田区生活再建・就労サポートセンターJOBOTA等の関係機関に繋ぐなど、相談支援に実績を上げています。
【広告の検索ワードの変更について】
【質問】
SNSやチャット等の利用も効果的です。チャットや通信アプリ、SNSなどは種類も多く、利用者も様々います。大田区はインターネットGKを行うにあたり、相談者が希望する場合は指定するアプリなどのアカウントを取得して、対応に当たっていると聞きます。ありがたいことです。
さて、広告の検索ワードについて質問します。長期休みの際の児童虐待や、休み明けの子供の自殺リスク、今回の消費税の増税やコロナウイルス感染症の影響における経済情勢の悪化、災害時など医療機関職員や行政職員などが過度な負担や不当な扱いなどによりストレスに苛まれ自殺リスクの増大が予想される場合などに際しては「失業」「破産」「雇い止め」「派遣切り」などの項目を広告の検索ワードに追加し、社会情勢の変化に対応した柔軟性ある対応をするべきではないでしょうか。見解を伺います。②
【答弁概要】
検索キーワードは月単位での変更が可能であり、社会情勢の変化に応じたとえば「職場」と「いじめ」という2つの用語を組み合わせることで自殺リスクの高いハラスメント関係のキーワードを追加することも可能であり、引き続き社会情勢の変化に柔軟かつ機敏に対応してまいります。
【自死遺族支援について】
【質問】
つづいて自死遺族支援事業について伺います。自死遺族のつどいについて、大田区も今年度から予算がつき、事業がスタートしました。とても喜ばしく思います。この自死遺族支援事業、今年度は2回実施されましたが、来年度はどのように実施をしていくのでしょうか?特に、デリケートな話題にもなりますから、同じ自治体の中での遺族の集いには参加しづらい方もいるかと思います。近隣区とも連携し在住、在勤に拘らず、参加できる仕組みが必要かと考えます。見解を伺います。 ③
【答弁 概要】
自死遺族支援事業としては、身近な人を自死で亡くした方々が、ありのままの胸の内を語り合い、聴き合い支え合う事を目的に今年度からわかちあいの会の開催を始めました。今年度は2回実施し、参加者からは思いを共有できたなどの感想を頂いています。令和2年度予算案には開催回数を6回に増やす内容で計上しています。また、委員お話のとおり同じ自治体のわかちあいの会には参加しづらいとの声も伺っていることから既に品川区と連携し、お互いにお住いの地域に関係なく参加できることとしており、来年度は、大田区は奇数月、品川区は偶数月にそれぞれ実施する事で、自死遺族の方にとって参加しやすい環境づくりを進めてまいります。
【全庁的な取組について】
【質問】
最後に経済対策について伺います。区内外に留まらず、今回の新型コロナウイルス感染症騒動は経済にも大きく影を落とし、世界経済にまで影響を与えています。昨年秋の増税や台風も重なった中で年が明けての騒動です。影響は計り知れません。私は以前、本会議で、経営者の自殺について質問し、区からは「平成22年から26年の自殺者数718人のうち45人が自営業・家族従事者でした。」と回答がありました。決して少なくありません。
経営者の方、また個人事業主、フリーランスの方の心身の健康について注意が必要です。今回は年度末もかさなり、雇い止めや就職活動においても苦しい環境になるのではないかと想像できます。大田区としても自殺対策という点からも今まで培ってきた相談、支援ノウハウ、また国や都の支援策を生かし、全庁的に今回の経済悪化に対し取り組んでいく必要があると考えます。見解を伺います。④
【答弁 概要】
自殺はその多くが心身の病気や生活困窮など、複合的な要因から追い込まれた末の死であることから、庁内の全部局連携した取組が重要と認識しています。この認識のもと、昨年、おおた健康プラン(第三次)で掲げた自殺対策の推進に向けた庁内体制の強化を実現するため、従来の課長級からなる大田区自殺対策庁内連絡会議に加え、区長トップし、部長級からなる大田区自殺対策戦略本部を設置し、庁内横断的な協議・検討を行う事を確認したところです。
今回の新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、事業活動が影響を受け、経済的な困難に直面する場合には、産業経済部、福祉部等の関係部局と連携を密にして国や東京都の施策も活用しながら効果的な支援に繋げてまいります。
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