Sep 15, 2020

今度は鳥取県で有害図書の通信販売規制?実効性に疑問

 こんばんは。大田区議会議員のおぎの稔です。以前、別の県ではありますが香川県のゲーム規制条例について取り上げさせていただいた際、反響をいただきました。国の法律だけでなく各地方自治体の条例もまた国民、その土地の住民の生活に大きく影響を与えるものです。特に私は表現の自由の問題にライフワークとして取り組んできたこともあり注意をしていたところですが、先日、鳥取県の県議会に「鳥取県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」が上程され、話題になりました。従前から、「ボーガンなどを未成年に通信販売などで販売を禁止する事を事業者に求める」という話は出ていましたが、蓋を開けてみたら有害図書(東京で言う不健全図書)なども入っており、驚いています。

問題となっているのは改案の②ですね。①の児童ポルノの提供を求めていけないのはその通りです。

議案第 8号 鳥取県青少年健全育成条例の一部を改正する条例(子育て王国課)

青少年が自らの裸体等を撮影させられた上でメール等によりその画像等を送らされる被害が発生し
ていることに鑑み、青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止すること等により、青少
年の健全な育成環境の形成を図るため、所要の改正を行うものである。
(概 要)
①何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めてはな
らないものとする。
②有害図書類又は有害玩具刃物類を青少年に販売等をすることを禁ずる規定について、インターネ
ットの利用その他の方法により鳥取県内において当該行為を行った全ての図書類又は玩具刃物類
の販売等を業とする者に適用することを明示する。
③①に違反した者は、30 万円以下の罰金に処するものとする。
[令和3年1月1日施行 ほか]

 

原本はこちら(PDF注意)

 

・有害図書とは?

 有害図書というのは(東京都では不健全図書)、なんとも物々しい名前ですが自治体がその作品の中での性、暴力、犯罪描写などの表現が青少年の人格形成に有害だと判断した場合に指定するものでいわば成人向け、R18の本です。最初から成人向けで売られているものはそもそも青少年に見せるものではないので、こうした指定はされません。一般向けに売られているものの中から、該当するものを販売後に自治体が、設置した会議体を通じて成人向けの規制をする形になります。レイティングの一種でもありますね。

・自治体レベルで対応できることなのか?

 

 上記の通り、有害図書は自治体がそれぞれ指定するものなので自治体によって微妙に異なります。鳥取県でOKで島根県では指定される作品もあるということです。この条例では、県内の店舗だけでなく、インターネットを通じた販売業についても適用するとしています。インターネット通販業者が鳥取県の有害図書の基準に則って全図書類を鳥取県の未成年向けに審査し、特別な対応をする。ということができるのでしょうか?

 まさか、鳥取県の県境で運送会社などのトラックを止めて検問をするわけにもいかないでしょうし、実効性についても不明です。通販業者が自治体ごとにそのような負担をしなければならないことを受けれいれるでしょうか?微妙な作品の扱いは全て禁止、または鳥取県住まいの未成年のサイト利用を禁止する方が手っ取り早くなってしまうかもしれません。全社で不利益を被るのは作者や出版社、後者では鳥取県民です。そもそも、有害図書の指定の中身というスケールの小さなことに思えるかもしれませんが、地方自治をも脅かす内容です。

 実店舗では対面で年齢確認などを行いますが、インターネット通販では本人確認は緩く、親や成人した家族の名義を使えば簡単に注文できてしまいます。インターネットを通じて青少年に起きている問題に対処したいというのは分かりますが、意気込みだけでかえって頓珍漢なことをしているようにしか思えません。自治体の範囲内に効力を及ぼす条例の効力を全国、または海外にまで広げかねないこの条例は、日本の法の形からみても歪んでいます。そもそも国内だけでなく、外国からも買い物ができるインターネット通販を条例の範囲で規制するのは無理があろうかと思われます。

 インターネットを通して子供がルールを破って知らない間に不健全な本を読んでしまう、ゲームや刃物などを買ってしまう事について不安がる親御さんの気持ちもわかります。子供が読んではいけない「有害図書・不健全図書」ということを知らずに子購入してしまうのかもしれません。自治体ごとに指定された本が違うのですから、実店舗と違う対応を行政の方も何とかしたいと思っているのでしょう。ですが、そのために必要なのは教育です。教育は通販会社の努力から学ぶものではありません。教師から学ぶものであり、そしてもっと大切なのは家族、親から学ぶものです。有害な情報を含め、世の中にある危険なことについて警告するのが親の務めです。子供が大きくなったら、自分自身で選択ができるように。

 

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