記事:「性犯罪を助長する」「社会的責任を自覚すべき」という批判は妥当なのか
大田区議会議員のおぎの稔です。先日、SNS上で話題になったラブドール騒動についてガジェット通信様から取材を受けた内容が記事になりました。社会心理学者・スクールカウンセラーの碓井真史新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授とともに、私も取材について回答しています。
ショタラブドール購入マンガを巡ってTwitterで議論展開 「性犯罪を助長する」「社会的責任を自覚すべき」という批判は妥当なのか
今回は子供、小児性愛、子供に対する性犯罪というワードもあったため特に過剰な反応を受けてしまったかもしれません。しかし、「実際に行ったら犯罪」でいうならば暴力も殺人も賭博も、フィクションで描かれる内容の中で犯罪になる行為は多くあります。性的な指向や嗜好でいっても異性愛も同性愛も相手の同意なしに実際に行えばそれは犯罪行為になります。
実際の犯罪のデータを見てみましょう。
この資料は児童の被害ではないので、児童、未成年などの場合はまた違うデータになると思いますが、強姦・強制わいせつ 検挙件数の被害者と被疑者の関係別構成比の推移 平成27年版 犯罪白書のデータです。強姦と強制わいせつでも全く傾向が違うのですが、全体的に傾向が増加傾向にあり、強姦は平成26年で5割が被害者の家族か面識のある人から受けたものです。比較してみると強姦における被害者が「面識あり」の場合は464人と7年(280人)に比べ約1.7倍に「親族」の場合は60人と7年(7人)に比べて約8.6倍にそれぞれ増加、また強制わいせつにおける被害者が「面識あり」の場合は1,033人、7年(223人)に比べて約4.6倍に「親族」の場合は81人と7年(6人)に比べて13.5倍にそれぞれ増加ということになります。平成27年度版(平成26年までの調査)だからこの5年くらいの間にどう傾向が変化したのかも気になりますが、行動範囲が狭く、大人より限られたコミュニティで暮らし、そのコミュニティ(学校、家庭など)に長時間拘束される子供は、家族や学校などのコミュニティでの顔見知りからの犯罪被害を受ける傾向はさらに増えるのではないかと思います。
次の資料です。平成27年版 犯罪白書 第6編では、平成26年の強姦,強制わいせつの検挙人数の職業別構成比は有職者(自営業者・家族従業者,被雇用者・勤め人をいう。以下この項において同じ。)の占める割合は一般刑法犯総数では40.8%であるが、強姦は69.2%,強制わいせつは67.6%であったと報告されています。強姦、強制わいせつは最近20年間を見ると、有職者の占める割合は一貫して6割を超えています。一般刑法犯に比べても年金生活者や無職者の犯行は減っており、一時期、何を考えてるかわからないと恐れられたニート・ひきこもりのような方よりも実際に普段は社会で働いて生活しているからの割合の方が高いこともわかります。
内集団バイアスともいわれますが、人間は何か悲劇的な事件が起こると自分たちとは関係ない、遠い存在、集団や人間が凄惨な事件を起こすと納得し、自分たちの周りは大丈夫だと「安心」を得ようとすることが多くあります。しかし実際は特異な人間ではなく、一見普通の方、それまで普通に社会生活を営んできた方であることの方が多いものです。イメージで犯人像を作り、安心してしまうのは帰って、犯罪を防いでいくという議論においても妨げになりかねません。犯罪を少しでも減らし、被害者を救済していくためにも冷静な議論をしていきたいですね。