Mar 31, 2015

アニメ業界の現状ってどうなっているの?①~撮影監督さんに聞く業界の話~

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先日、アニメ制作会社で撮影監督をしている方から、アニメ業界の現状についてお話をお聞きする機会がありました。

メディア等で伝えられる現状は実際と合っているのか?また、政治家・行政の掲げるクリエーター振興策は現場の方から見てどうなのか?

率直にお聞きしました。

撮影監督さんとは、仕事が押していて本来の約束より1時間遅れた21時からの意見交換となりました。

大変な現場である事がうかがい知れます。

 

意見交換の内容は自身の政策反映の為の資料・備忘録、また皆様とご理解を深め合いたい、また、様々な方のご意見を伺いたいと思い、許可を得たうえでヒアリングの内容も公開する事に致しました。

ご意見・ご感想を頂けますと幸いです。

 

今回は撮影監督さんでしたが、他にもいろいろな立場の方のご意見を聞き、理解を深めたいと思います。

 

※お話した個人の偏見・先入観が入ったものであり、実態とは違う内容も含まれる可能性もあります。予めご了承ください。


★アニメーターの現場の労働環境

アニメーターの労働環境の悲惨さについてメディアで語られるようになって久しいが、実態は状況による。

アニメーションの制作工程はマンガと違って細分化しており、仕事もそれぞれ異なる。

例えるなら、様々な部品製作と組立、塗装が分かれる工場での作業に近い。

 

《【制作工程】

①企画・脚本・コンテ

②原画、動画   ←ここがよく言われる世間一般的な「アニメーター」

 

②背景(原画、動画と同時期工程)

③仕上げ(着彩)

④撮影(キャラと背景の合成・エフェクト足し)

⑤編集

⑥音響・声優

⑦修正工程

⑧ビデオ編集

 

大まかに言って上記①~⑧を含めてアニメ制作現場となる。 他にも、プロデューサー、制作進行、外部も含めればスポンサー、放送局、広告代理店が入ってくる。

【まとめ】

待遇が悪いのはアニメーターのみ?

全体の予算の中から、放送局、広告代理店、制作会社等でお金が配分され、さらにその制作会社の中で、各工程ごとの人員、部署へ報酬が払われる。

アニメーター以外のアニメ制作に携わる方全員の待遇はどうなのか?を考えずにアニメーターのみの待遇改善というのは理解が得られないのではないか?

 

 

 

【改善策としてのご意見】

 

緊急の対策で、住宅補助や給料補助、税金減額等の仕組みには効果は一定程度あると思うが、根本のシステムを変えなければならない。

どこにどういう単価、どういう報酬が支払われているのか、その額は適正か? また、広告代理店・放送局、制作会社の配当。 そこに関わる人数日、仕事に関わる時間と、お金の配分が比較して適正であるのか?

広告代理店●●人、放送局●●人⇔アニメ制作現場 ●●●人 もちろん、機材の違いや扱う媒体等、人数比での単純計算は出来ませんが、今の制作現場の人間の待遇と放送局や広告代理店の人間の待遇のバランスはおかしいのではないのか?

 

★アニメ制作と配分の違い

 

近年、アニメ制作は●●制作委員会方式という形で、様々な出資者がお金を出し合って製作費をねん出する方式が主流。

多数の出資者が関わる事で、不振に終わった場合、不良在庫を抱えた場合などのリスクを分散する役割もある。

出資者は制作会社 ・スポンサー、広告代理店 ・放送局 ・出版社、レコード会社、グッズ販売会社、等》 と大きく分けられるが、その作品の製作委員会の主導がどの会社になるかで配分は異なる。

どの場合にしても、制作会社への配分はそう大きくはない。

 

★制作現場でも仕事によって報酬は違うのか? 上記の通り、アニメーター=原画スタッフ、=動画スタッフではない。

私(撮影監督)の印象では、アニメーターは個人事業主と社員が7:3くらいのイメージである。 原画スタッフにフリーの個人事業主が多く、動画スタッフに社員が多いイメージであり、

  ②原画、動画   ←ここがよく言われる世間一般的なアニメーター

 

この並びにおいても、動画スタッフ以降は会社員が多い印象。

とりわけ、アニメーターと言われる中においても、原画さんは高収入の方がいる場合もあり、月によっては百万単位の報酬をもらっている方もいる。※

  ※ただし毎月という訳でなく、「報酬を得る月がある」という意

 

 

ゼロから紙に絵を起こす原画さんの場合、優秀なスタッフの取り合いが起きる事も多々もあり、原画スタッフ不足も起きている。

比較的、好待遇な場合の方もある原画スタッフと違い、動画・背景・仕上げスタッフは生活の苦しい人も多い。 (フリーではなく会社員である事も含め)

【余談】同じアニメ制作工程内でも、部署ごとの交流は責任者以外はゼロに近いくらい少なく、交流が増えたのはここ最近。

 

 

★ヒット作は現場に利益を落とすか?

 

最初から、ある程度のヒットが予想される大型の案件の場合は、予算も多く、場合によっては報酬も高い事があるが、 そうでない場合。

(後から大ヒット、思わぬヒット等々) 例えば、1話あたり●●●万円×■■話の予算で制作が行われている。(ここは大作以外そこまで差はない) 人気が出て、グッズ、CD、本と追加での売り上げが出たとしても、 アニメを作り終わった時点で報酬が決定している。(後の人気に関わらず) 余剰の利益は広告代理店、制作会社など製作委員会参加会社に入るが、その余剰の売上分がアニメ制作現場のスタッフに還元されることは稀。(製作委員会参加会社間でまた配分が違う)

 

声優等ドラマCD、キャラソン、イベント等追加要素のある制作現場に属するスタッフはいるが、アニメーターさんの場合《(特に動画以降のスタッフ)》は還元されることは少ないのではないか。

 

★メディアとの関係

現状の配分のアンバランスの苦しさに加えて、製作予算も年々削られている事も苦しさに拍車をかけている。
⇒【 ネットメディアの発達に希望】

ニコニコ動画、youtube、USTREAM ネットの通信速度up、環境の発達の影響で制作会社の地方に移転も可能になった。 アニメーターが都会だと家賃が高く生活出来ないという現状もあるが、地方に移転すればその分、固定費が抑えられるというメリットもある。

 

また、ネットメディアのさらなる発達で配信先の選択肢が増えることによって、アニメ放映の費用減少や制作現場への配分率の変化も期待できるのではないか?

 

 

最後の最後で地方移転と、大田区と離れてしまうお話も出てしまいましたが、大田区でどういう政策を打てるのか?また、政治・行政の掲げるクールジャパン政策の是非についてヒアリングをした

アニメ業界の現状ってどうなっているの?②~クールジャパン政策って実際のところどうなの?~に続きます。

 

 

続きは➡こちらから

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コメント1件

 bo | 2015.03.31 23:02

はじめまして、こんにちは。
アニメやオタク関連の規制に積極的と言われる維新の党の中に、業界への関心を持たれている議員さんがいらっしゃるということを心強く感じています。
今回の記事も興味深く読ませて頂きました。

個人的には、
Q.「……」
A.○○「……」
という感じで、誰の発言かが分かりやすいと尚良いかなと思いました。

今後も、アニメーターさんや漫画家さんの現場の意見の吸い上げを期待しております。

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