ゲーム依存や利用時間制限、不登校について質問しました。
こんばんは。大田区議会議員のおぎの稔です。区議会予算特別委員会でも取り上げた、「子ども達のゲーム依存」や「ゲームの利用時間制限」、「ゲームと引きこもりの関係」についてのご報告です。
話題になった香川県では、「ゲームは一日一時間」という利用時間制限を設けた条例が県議会で可決。4月1日から施行されました。質問と答弁についてはブログ下部に記載しております。宜しければお読みください。この香川県の条例については、条例制定までの議論の進め方、パブリックコメントの扱い方にも問題がありその点については、超党派の地方議員14名の賛同を頂き、抗議声明も出しました。更には当初の懸念通りに解釈の余地もある、あいまいな定義の「事業者側が守る事が難しい条例」でもある事から「香川県民お断り」とする事業者も出てまいりました。
子どものゲーム利用を1日60分以内に規制、条例可決へ…親の責務も明記、不登校原因と指摘
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例への抗議声明(地方議員14名連盟)
ついに「香川県民お断り」のサービスが現れ「こうするしかない」「差別を助長するのでは」と賛否 運営者に意図を聞いた
昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の為に、日本でも学校の一斉休校や外出自粛なども呼びかけられておりますが、世界各国でも都市封鎖を含めて厳戒態勢が敷かれています。そういった中、世界保健機関(WHO)も、米国のゲーム業界18社とともに、COVID-19の感染拡大を予防するためのメッセージを合同で広めるキャンペーン「#PlayApartTogether」の実施を発表しました。
感染予防キャンペーン「 #PlayApartTogether 」をWHOと米国のゲーム業界18社が実施。国内ではハッシュタグ「 #家にいるだけで世界は救える 」「 #家でプレイステーションをしてろ 」も登場
ゲーム業界とWHO、「PlayApartTogether(離れて一緒に遊ぼう)」キャンペーン 新型コロナウイルス感染拡大受けて
感染を広げないために家の中で遊ぼう、ゲームをしようと世界機関が呼び掛けている状況なのです。科学的根拠もなく、おかしな議論の進め方で行った条例の制定が、香川県の子ども達に作用をもたらそうとしています。しっかりと科学的な根拠に沿った議論を続けていかなければならないと、改めて認識しました。大田区議会でも事実に基づき、今後も提言を続けていきます。
【質疑】
【ゲーム依存症対策・利用制限】
【質問】
ネット・ゲーム依存症対策について伺います。「子どもたちを始め、県民をネット・ゲーム依存症から守るための対策を総合的に推進するため」という趣旨のもと香川県議会で「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が現在審議されています。こちらは秋田県の大館市も追随すると報道されました。大田区の考えについてもお聞きしていきます。
香川県の条例素案には「子どものスマートフォン使用等の制限」という項目があり「ゲーム依存に繋がる様な利用について1日あたりの利用時間制限が60分まで、学校の休業日にあたっては90分まで」義務教育修了前の子どもにおいては、「午後9時まで、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。」とあります。
このゲーム依存につながるような利用というのもよくわからないのですが、そもそもWHOも「ゲーム障害は1年以上ゲームにより社会生活に影響がある状態」、また「ゲーム障害はゲームをする人の中でごくわずかだ」としており、かなりレアケースである事を示しており、一定年齢の子供すべてに条例で規制をかけることは過剰な規制です。スマートフォンやインターネットの利用については、家庭での話し合いを行うべきです。家庭の自主性、プライバシーを尊重すべきであり、条例という形で利用制限のような個別具体的に行政が家庭に踏み込むべきではありません。
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会をはじめとするゲーム業界4団体は条例などによる「一律での時間規制」について、「(一律で規制するのではなく)保護者と相談して未成年者が主体的にルール(約束)を作ることを推奨する」と意見表明をしました。大田区でもeスポーツについて、他の議員からの質問に対して「国や他自治体の動向を踏まえ、区の施策への活用について研究をしてまいります。」と回答があった所です。
また、国においてもゲーム依存症と利用制限の関係について、依存症の防止に「ゲーム時間の制限に係る有効性及び科学的根拠は承知していない」と時間制限の有効性を否定する質問主意書への回答もありました。 国際都市おおたとして、羽田空港を抱える首都東京の空の玄関としてこのような時代と逆行した考え方は採用すべきではありません。子供がゲームなどに夢中になっている家庭での利用や使用の仕方について大田区の見解を伺います。①
【答弁 概要】教育委員会 指導課長
児童生徒を取り巻くインターネット環境は近年、目まぐるしく発展しております。区といたしましては家庭におけるインターネットやゲームの使用についてルールを作り、子供たち自身がそのルールを守っていく事が重要であると考えております。
東京都教育委員会は、いじめ等のトラブルや犯罪に巻き込まれないようにするとともに、児童生徒の学習への悪影響を防ぐ為、SNS東京ルールを策定しています。各学校ではSNS東京ルールを元に児童生徒の実態に合わせSNS学校ルールを作り、適切なインターネットの使用について指導しております。また、各家庭に対してもSNS家庭ルールを保護者とともに考え、子供たちに適切に使用する事の重要性を伝えております。
【不登校・ひきこもり】
【質問】
次にひきこもりや不登校とゲーム依存について質問します。香川県の条例を巡りあたかも問題がゲームにあり、ゲームをやり過ぎている中で、ひきこもりや不登校になってしまったかのような議論がありました。では大田区はどうなのでしょうか?大田区内での子供の不登校の原因について伺います。②
結果として不登校やひきこもりになってしまっている方がゲームやネットに集中している事はあるかもしれませんが、原因ではなく因果関係は逆です。そもそもゲームやネットを子どもから取り上げてしまうことが、不登校の子供にとって良いことなのか根拠がありません。一方的に「ネットやゲームが引きこもりの原因になっている」と断じる事は問題です。
子どもたちの不登校や引きこもりの理由は、ゲームが好きだからではありません。生きづらい環境があって不登校や引きこもっているのです。そこが子供にとって自分の唯一の居場所になっているかもしれないのに、インターネットやゲームを取り上げてしまう、またそうしたメッセージを自治体が出してしまってよいのでしょうか?
依存症の治療の中のプランの一つとして、ゲームの利用制限はあるかもしれませんが、個別に行われるべき事であり、条例に書くべきことではありません。何か病気に対する法律や条令で、医療費の助成やその他支援はあっても「○○病の患者は一日3回、朝昼夜の食事後、薬を飲みましょう」とはしません。ゲームに夢中になってしまい、他の事に手がつかないのなら、無理やりシャットアウトするのではなく、ゲーム以外の目標を作り、ゲーム依存から脱却していくよう支援していく必要があると思います。
【答弁】
平成30年度の国の調査によると、不登校の原因としていじめを除く友人関係を巡る問題、学業の不振、家庭にかかる状況の3つが大きな割合を占めており、東京都や本区においても同様です。特に本区の小学校では家庭にかかる状況が不登校の原因で最も多く、中学校では家庭にかかる状況を及び、いじめを除く友人関係が不登校の原因として多くなっております。尚、不登校とゲーム依存の関係については今後、注視していきたいと考えております。
【リテラシー教育】
【質問文】
次にリテラシー教育について伺います。
私が学生の頃も、出会い系や成人向けサイトからの架空請求などが問題になってましたが、現在では、通信アプリやSNSを介してのいじめや犯罪との関わりが問題になっています。実際にゲームを遊んでいないと気づきにくいのですが、最近はチャットアプリやゲーム内でのチャット・メッセージ機能、動画サイト、実況動画やゲームなどの掲示板、コミュニティなどで問題が生まれています。
ゲーム内アイテムやアカウントの不当に高額な取引であったり、暴力、性犯罪、不当な勧誘など子供が巻き込まれていく犯罪は様々です。これらが難しいのはSNSや通信アプリ以外での、ゲームや動画サイトなどで起きているという事。通信ツールでなく、ゲームなどである為一見、気づきづらいという点です。 子供たちの現状の調査と共に、保護者や学校でのリテラシー教育の中で、こうした危険についても触れていく必要もあると思います。大田区の取組と見解を伺います。③
新型コロナウイルス感染症による一斉休校や長期休みなどに子供が犯罪に巻き込まれないよう、取り組みを要望し質問を終えます。
【答弁】
ネットによる犯罪から児童生徒を守る為には、生活指導を中心に子供たちに具体的な危険を示しながら指導を行うとともに、保護者に対する働きかけが必要不可欠であると考えます。教育委員会では平成28年度より全小中学校で保護者向け情報モラル講習会を年一回実施しております。この講習会では全国や東京都の子ども達のネット利用の状況や様々な危険性を伝えながら家庭において子供たちにどのような指導を行えばよいのかを考えるきっかけとしています。
次年度はさらに、区立小中学校6校においてスマートフォンなど情報機器に関する実態調査を実施しその結果をもとに、より切実感をもった講習としてまいります。今後も保護者に対する講習会を通して、児童生徒に対して、情報モラル教育の中でリテラシー教育を実施して参ります。
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