未来への課題。「2040年に単身世帯4割」と自殺リスク
こんにちは。おぎの稔です。
先日、「2020年に単身世帯4割に」とのニュースが流れました。この問題に関心を持ってきた人間としては、数字として推計が出てきた事には複雑な思いがあります。
2040年、単身世帯4割に=未婚の高齢者急増―厚労省推計
1月12日 時事通信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180112-00000100-jij-soci
2040年に単身世帯が1994万人に上り、一般世帯全体の4割近くを占める見通しであることが12日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所がまとめた世帯数の全国推計で分かった。
一度も結婚したことのない65歳以上が男女ともに急増し、単身世帯に占める65歳以上は896万人で45%に達する見込み。
同研究所の担当者は「少子化で2世代同居や3世代同居の家族形態が減る中、1980年代以降に未婚が珍しくなくなった世代が高齢期に入るため、高齢者の独居率が高まる」とみている。
●自殺問題から見る単身者のリスク
地域の維持、医療・介護や年金などの社会保障、労働人口などの支え手不足、様々な点から高齢世帯を含め、単身世帯が大きな割合を占める事には社会的に大きな課題が噴出してくる事が予見できますが、私は同居人のいない単身世帯が抱えるリスクとしての自殺の問題を大田区議会でも取り上げてきました。
平成21年~26年 大田区内全自殺者数865名のうち、男性612名、女性253名となっており、特に20代~60代は全ての年代で男性自殺者は女性の倍以上です。
「同居人あり」の方と「同居人無し」の方でも自殺者に男女の差が明確に出ており、年齢別でみると同居人ありの場合が20代から60代まででは1・5倍から2倍の開きであるのに対し、同居人無しでは20代で男性が7倍、30代で2倍、40代で8倍、50代で10倍、60代で3倍となっています。孤独を抱えた、あるいは社会的に重圧を負いながら、周囲に相談をしづらい立場の方は男女ともに多くありますが、特に男性に顕著なのだと思います。
一般的には男性は強者とされます。男性は体力もあり、社会的にも特に政治の世界など、一部でまだまだ男性が強い領域もあると思います。弱者として認定されない、男らしく強くあることが求められるからこそ、打ち明け辛い、理解されない苦しみもあるのではないでしょうか?
このような同居人の有無による自殺リスクの差が見られることからもわかるように家庭・交友・恋愛などを含む社会参加も自殺問題に深く関わっています。
社会参加の面からも総合的な自殺対策を進めるための調査・研究が必要です。
参考ブログ:
孤独な男性はなぜ死を選ぶのか?大田区の男性の自殺リスクについて
●現役世代の社会参加をどう考えるのか?
平成22年12月に東京都監察医務院の出した、『東京23区における孤独死の実態』によると、平成18年では男性2362名、女性1033名が23区内で孤独死しています。男性では45~49歳の年齢階級で孤独死は100件を超え、以降に急激に上昇し、60~64歳で404名にもなります。女性は70歳未満では100名を超える年齢階級は存在せず、70歳以降で初めて100件を超える事と大きく異なります。
孤独死の死後発見のデータについて、平成18年では女性が6.5日と一週間を切っているのに比べ、男性は約12日間と2週間近い日数を要することが明らかになっています。発見年数は年々伸びており、男女で発見される日数に倍近い開きがあることは注目に値します。
定年後の男性の孤独死件数が急上昇することからも、男性は労働以外で社会との結びつきを持つことが苦手であり、仕事のリタイアと同時に孤立におちいってしまう現状が想像できますが、共働きまた単身世帯の増加は男性だけでなく、女性にとっても仕事以外の関わり、断絶を産んでいく事が懸念されます。
社会との断絶が自殺のリスク増につながっていくのは先ほど述べましたが、孤独死のリスク増にも繋がる懸念はあります。
孤立防止などの点から私も以前、議会で文化・スポーツ、また地域参加の点から現役世代の社会参加を訴えましたが、今まであまり取り上げられてこなかった、また当の現役世代の多忙さなど、実効性の問題などから効果的な対策、進展はまだ見れていませんが、20年後に単身世帯が4割に上るというこの問題を未来への宿題として、自殺対策・孤立防止の点からも今後も取り組んでいきたいと思います。