食のバリアフリーか?政教分離か?ハラル認証事業について
東京若手議員の会の視察で、台東区のハラル認証事業についての説明、また実際に台東区の認証を受けた店舗「かえもん」にて食事をしてきました。
民間、行政それぞれがムスリムの方々への受け入れ環境整備に乗り出しています。
一方で懸念点、議論点も多くあり、行政の支援、制度がどこまで関わっていくべきか、慎重に判断をしていかなければならないと思います。
台東区ハラール認証取得助成事業」のご案内(台東区)
外国人受け入れについては政策マンガでも取り上げています。
●現状
日本への外国人観光客が1000万人を突破する中で、様々な国の方が訪れる日本には多様性対応が求められます。
イスラム教徒はキリスト教徒に次いで多いとされ、全世界でも4分の1に迫る勢いの人口となっています。
外務省のデータによれば中国・韓国・台湾・インド・シンガポール・タイ、インドネシアと言ったアジアの国でもイスラム教徒は一定数おり、中国では人口の1.8%の2330万人、インドネシアでは人口の88・1%の2億人超え。インドでも人口の14.6%の1億8250万人とされています。
イスラム教徒の方々は2030年にはキリスト教徒に迫る勢いで更に増加するという予測、アジア太平洋地域諸国からの海外旅行者が2019年までに前年比10%前後のペースで増加するだろうといういう予測もあり、大田区内だけではなく、日本全体でのイスラム教徒への受け入れ態勢強化等は必要になってくると思います。
蒲田にもモスクが出来ましたね。
●食のバリアフリー化という点からのハラル認証
上記のメニュー、こちらには肉は一切使われていません。
ベジポーク※を使った料理であり、ベジタリアンも食べる事が出来ます。
食べてみて「言われてみれば確かに肉じゃない・・」という感じでした。
食のバリアフリー化という意味でいえば、このハラル認証は、イスラム教だけでなく、ユダヤ教、ヒンズー教、ジャイナ教、またベジタリアンにも一部対応できる事になります。
※大豆ミートなどから作る疑似肉・フェイクミート
多様性対応という点から、食のバリアフリー化、イスラム教徒が日本に来て、食に不自由することが無いように整備し、飲食業、観光産業の収益として繋げていくという狙いも、台東区にはあるのだと思います。
一方で、公平性・政教分離と言う点との綱引きはついて回ると思います。
また、下でも触れますが、どこまで踏み込むかどうかは別にしても、食のバリアフリー化という点から、議論をし体制整備をしていく事に意義はあると思います。
●ハラル(halal)認証の課題
ハラールはひと言でも、意味として2つあります。1つはイスラム法で合法であること、そしてもう1つは健康的、清潔、安全、高品質、高栄養価であることです。
従いまして、ハラール認証を受ける際には、イスラム法に乗っ取った基準をクリアする事はもちろんですが、工場や施設内は2つ目の項目もクリアしなければなりません。
NPO法人 日本ハラール協会HPより http://www.jhalal.com/halal
日本国内ではハラル認証団体が乱立、基準があいまい、自己申告?のような事例もあり、ハラルを掲げながら食肉を出してしまうような事例もあるそうです。
ある程度の統一・明確な基準を作らなければ日本国内でハラル認証、商売を進める事そのものがかえってイスラム教徒からの信用を失ってしまう場合があります。
(そもそも、日本におけるハラル認証そのものがまだ大きく普及、認知が進んでいないという点もあります。)
●行政がどこまで踏み込むべきなのか?
台東区の事例
・飲食店への助成としては全国初の試みとなる台東区ハラール認証取得助成事業
対象は区内に店舗を構える飲食店等になっており、助成金額は助成対象経費※の2分の1以内、上限10万円となっています。
※新規でハラール認証を取得する為に要する経費のうち必要かつ適当とみられる経費
この事業の導入により3店舗だった台東区内のハラール認証取得店舗数が18店舗(15店舗増)となったそうです。
・ムスリムおもてなしマップin台東を昨年12月に1万部作成、2月にも1万部増刷の予定。
ムスリム比率の高い国の駐日大使館や観光案内所、宿泊施設に配布
台東区は観光地という事もあり、かなり踏み込んだ制度を始めたなぁというのが正直な感想です。
現状、イスラム教徒の方々への受け入れ環境整備が遅れていたとしても、いきなり助成金までつけていくというのは、大胆な決断だったのではないでしょうか?
実際、賛否両論あるとの事です。
民間の自主努力に任せるべき、特定の宗教を宣伝している行為、宗教その物をお金儲けに利用しているという批判もあると思います。
他の宗教・国家等との公平性や政教分離の観点、行政の立ち位置や補助・支援の在り方については、日本全体で議論を深めていかなければなりません。
そうした議論を注意深く見守りながらも、どの国の人、どこの信徒の方も同じように日本での観光、生活を楽しめる、食のバリアフリー化の促進という意味で今後も応援をしていきたいと思っております。
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大田区にも「ウェルカムショップ登録制度」があります。ハラル認証助成事業とは異なり、助成金や意イスラム教徒対応に特化したわけではありませんが、外国対応を進めようという方向性は同じです。
大田区では、地域として外国人の過ごしやすい環境整備を進めています。このなかで、外国の人が安心して利用できる、飲食・買い物・観光・宿泊できる店舗・宿泊施設などを登録する「ウェルカムショップ登録制度」に取り組んでいます。
大田区の「日本人も外国人も楽しめるまち」「人と人とのふれあい」「ウェルカムな気持ちをあらわしたい」という主旨に賛同いただける皆様のご登録をお持ちしております。
「大田区ウェルカムショップ」「大田区まちかど観光案内所」 大田区 HP