高校でカフェ?イマドキの通信高校の教育スタイル-
公立の通信制高校の現状、おかれた環境を知るため、通信制課程をもつ立川市にある東京都立砂川高等学校を視察しました。
私も働きながら学んだ身として、同じように様々な形で学校に通う方々の支援には大きく関心があります。
先生からの説明だけではなく、NPOとの連携によって行われている砂川カフェではスタッフや通われている生徒ともお話が出来ました。
●都立砂川高校 HP
NPO・企業と連携した社会的・職業的自立支援事業指定校であり、東京都教育委員会 OJT(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング)推進指定モデル校です。(定時制)
大田区を始めとする東京23区の都立の通信制過程を持つ高校は、都立一橋高校があります。
機会があればお伺いしてお話をお聞きしたいです
●都立一橋高校 HP
●都立砂川高校の教育課程
定時制3部制+通信課程という珍しい教育課程を取っています。
・1部 8:30~14:20
・2部 10:10~16:05
・3部 14:30~20:40
どの部においても、不登校や昼夜逆転等の生活リズムのバランスの悪い生徒はいますが、1部は一般的な普通科に通う生徒、2部は中学時代に不登校等、昼夜逆転、生活リズムがうまく取れない生徒がおり、3部は全体的にアットホームな様子もあるそうです。
全体のおよそ、4割に近い子が不登校の経験がある場合もあり、平成27年度は2部、それ以前は1部、3部の入学希望者が多かったそうです。
受験の段階で1部~3部の希望を取りますので、部によって別々の試験があるわけではありません。
通信制は4月になってからの出願・入試となる為、高校の一般入試では一番最後となります。
説明をしてくれた副校長曰く、4月1日に着任して翌日に出願・入学試験という事で、着任早々その仕事の責任の重さをひしひしと感じたそうです。
●授業スタイル
通信教育は前期(4月~7月)、後期(10月~1月)の中で12回のスクーリングが行われ、面接授業を行います。
以前の砂川高校は「生徒が自分で学習を進めるという」という通信制課程のスタンスでしたが、今は少しずつでも生徒の学習を進めさせる工夫をするようになりました。
レポート(添削指導)、スクーリング(面接指導)、試験(成果測定)
と計画性、自主性、積極性を重んじた個人の自主的な学習を求めるスタイルです。
仮に、日本史Bであればレポートを年12冊提出し、毎回、合格の評価を得る必要があります。
教科書、学習書を使って、レポートを提出し、合格の評価にならなければ試験を受ける事は出来ません。
自分だけで問題が解けない場合のアドバイスはメール・電話・平日登校の個別相談、スクーリング日の学習支援などを行い、生徒の学ぶ体制を支援しています。
1回のスクーリング45分で一単元すべて取り扱う事になります。
一日のスクリーングは7時限あり8:50から休憩を挟みながら15:25分まで設定されています。
時間の関係上、新しい知識を最初から説明を受ける形式ではなく、自分なりに教科書・学習書で学んだ事を確認する形式です。
上のカリキュラムはちょっとわかりづらいですが、一日7時限にある中で、同じ時限に複数科目のスクーリングが行われる為、その日に全ての教科科目を学べるわけではありません。
1日12教科45科目の開講科目があります。
自分でどの授業を受け、単位を取得するかを考える大学に似た形式になっており、前もって自分で考え解答するレポートは、いわば「反転学習」の形、学んだ内容の確認と活用となるスクリーングは、いわば
「アクティブラーニング」の形とつながるものがあり、今の時代に合った勉強スタイルへと言えそうです。
また、通信制課程にも部活動は存在します。平成27年度はバスケ部、バドミントン部、テニス部、軽音部があります。定時制の文化祭に参加する文化系の活動もあるそうです。
・生徒の進路
卒業生の進路について
・平成24年度
進学合計:17名(大学進学4名 短大 2名 専門学校 11名)
就職:8名
・平成25年度
進学合計:25名 (大学10名、短大3名、専門学校12名)
就職:7名
・平成26年度
進学合計:28名(大学11名、短大1名、専門学校16名)
就職:22名
●通信制課程に通う生徒の現実
・生徒の変化、「勤労青年」から「多種多様な事情を抱えた方に」
勤労青年のイメージをお持ちの方も多いのではないかと思いますが、「勤労青年」は今の砂川高校の生徒では全体の数%程度だそうです。
10代生徒が全体の90%以上。引きこもり経験者や全日制・定時制高校への進学や環境にうまく適応できなかった生徒等が通っています。
コミュニケーションの取り方や、人間関係を作る事が苦手な生徒が多いとの事です。
また、勉強ができない子が通信制に来る・・というわけではなく、むしろ自分で期日を決めて勉強を進められない、つまり計画を立てられない人には通信制での卒業は時間がかかるそうです。
生徒在籍数は平成27年9月1日現在で475名。15組です。
職員数の教員数は15名、管理職(校長は定時制と兼務)2名、時間講師7名、養護教諭(非常勤)1名、スクールカウンセラー1名(定時制と兼務)、添削指導員7名の計33名です。
●見えてくる生徒の課題
いじめ、不登校などの多様な事情を抱えている生徒が多い事から大人や他人への不信感、警戒心の強い生徒も多くいます。
コミュニケーションを取るのが難しい生徒だけではなく、ネットの記事をすぐに鵜呑みにしてしまうような生徒もいて、先生側も対応に苦慮します。
また、週に1回前後の要点を押さえるスクーリング以外は、文面でのやりとりが多いため生徒と先生の意思の疎通が難しい部分もあります。
●学校現場に必要な支援
今必要なのは先生を応援する方です。
生徒を応援しようという声は大きいが、先生を応援することも生徒を応援することにつながります。
かといって、学校外から学校の様子も分からずに、ただ『お手伝いしたい』と言われても、学校は判断しかねてかえって現場が混乱しかねません。
学校と連携、調整をしながら支援をしてくれる外部協力者がいてくれると現場は助かるそうです。
●校内託児室の開設
11年前の学科改編の際に間に合わなかったスクーリング時の校内の託児室の設置ですが、2年前の冬に生徒夫婦が赤ちゃんの面倒を見ながら交代でスクリーング授業を受けていた事にショックを受けた先生方からの想いが、設置の本格化のキッカケになりました。昨年の学校説明会にも子供連れの方が来てます。
平成27年度10月より正式にスタート(6月より試験的に実施)しました。
1~5歳を預かります。
現在、12名が登録。だいたい5人くらいの子供を一回のスクーリング日と試験日に預かっています。
●NPOとの連携「砂川カフェ」
砂川高校のコンセプトの一つ『世の中とのつながり』を作るキッカケの場となる「砂川カフェ」を、スクーリングの開講期間に、月に1回開設します。
学校の中に学校を中心とした「つながる」場所として、通信制の生徒の書道作品などを展示するカフェギャラリーやカフェを利用しての進路・生活相談も行っています。
飲み物の提供だけでなく、フリースペースもあります。
学校の中に学校を中心とした「世の中とつながる」場所として、通信制の生徒の書道作品などを展示するカフェギャラリーや、カフェを利用した進路・生活相談の場にもなっています。
私が視察させて頂いた際も、多くの学生でにぎわっていました。
学校に来る生徒の雰囲気も、自由で大学の様でした。
現在、他にもなかなか学校に来れない生徒への支援事業を実施中との事です。
●まとめ 多様化した生徒像、学習ニーズにどう対応するか
過去の勤労青年のイメージとは違い、現在は多様な事情を抱えた生徒の学習の場となっている通信制高校。
4月入学当初が一番登校する生徒数が多いが、段々と生徒数が減っていく現状がある。どうケアをしていくか?
託児室のような学習環境の整備や、相談、サポートといった学習を継続する為の支援、特に生徒同士、先生とのコミュニケーションが全日制・定時制より難しい通信教育では「砂川カフェ」のような交流スペースも重要になってきます。
生徒にとっては今までしたことが無い厳しい学習環境の中での学習となるが、そこでしっかりと学習を出来る生徒はドンドン伸びていくそうです。
様々な事情、環境によって成長の機会を阻害、学習、学校に通う機会を失ってしまった生徒たちをどう支援し、卒業させ、進学や就職への支援に結び付けて行くか。
将来の社会人、納税者を育て上げていく為にも、学校、外部共に協力、連携を進めていく必要があると思います。
以前の奨学金についての質疑でも触れましたが、多様化した学習ニーズや生徒の抱える課題の細分化に対応する為にも行政の支援、対策の在り方も、柔軟にしていかなければなりません。
(以前のブログ 大田区は23区で最強?区独自の奨学金制度を更に柔軟に!)
若者支援は、私の政策の柱の一つとして今後も追いかけていきます!
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大田区議会議員 おぎの稔
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