孤独な男性はなぜ死を選ぶのか?大田区の男性の自殺リスクについて
こんにちは。おぎの稔です。
本日は3月の予算特別委員会で触れました、自殺対策、孤独死対策について触れます。
まず、以下のふたつの資料をご覧ください。
一つは東京都監察医務院の出した、『東京23区における孤独死の実態』、もう一つは大田区の平成21年から26年までの自殺者の同居人の有無の男女の集計です。
男性は女性に比べ孤独死しやすく、発見日数にも時間がかかる事、また、同居人がいない男性は同じ条件の女性に比べても自殺のリスクが高い事が判ると思います。
何故、こうも違いがあるのでしょうか?
一般的には男性は強者とされます。男性は体力もあり、社会的にも特に政治の世界など、一部でまだまだ男性が強い領域はあると思います。
権利の問題など改善するべき部分もありますが、自殺や孤独死に限定すると、男性は女性に比べても多く命を絶ってしまう、また孤独に死を迎えている事が明らかです。
弱者として認定されない、男らしく強くあることが求められるからこそ、打ち明け辛い、理解されない苦しみもあるのではないでしょうか?
また、定年後の男性の孤独死件数が急上昇することからも、男性は労働以外で社会との結びつきを持つことが苦手であり、仕事のリタイアと同時に孤立におちいってしまう現状が想像できます。
現役世代においても、男性の方が地域・社会参加の割合が低い事は、区のアンケート結果から明らかになりました。
議会質問では、最後の方はあまり明確な対策前進を期待できるような答弁を引き出すことが出来ず、自分の力不足を感じますが、問題提起と地域連携の部分では次に繋がる回答も得られたのではないでしょうか?
実際、質疑の調整中にも「今まであまり議論になってこなかった部分だからなぁ」と区の方と一緒に悩みながら、質問を作成しました。まず、男性のこうした課題や苦しみを社会課題として大田区と共有する。第一歩だと思います。
なぜ、男たちは孤独に陥ると死に向かってしまうのか?
そして、何日も放置されてしまうのか?
そうした議論を社会全体でもっと喚起していければと思います。
関連ブログ
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殺処分のない社会に向けて~地域猫活動の推進について
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質疑
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毎度のことになってしまいますが自殺対策について伺います。
自分にとってはただの紙切れでも、誰かにとってはお守りかもしれない。
自殺対策とはそうした難しい課題へのあゆみ寄りの積み重ねなのかもしれません。
私事ですが、少し、お話をさせてください。
2月20日、家族が自ら命を絶ちました。
自殺対策を、子供の頃に家族を失った自死遺族であるとして、自殺対策を訴えてきた自分の身内から自殺者が出る。
自死遺族として自殺対策を頑張るんだと生意気なことを言っていた自分は、どんな顔をしていけばいいのか判らず、葬儀に行くことが出来ませんでした。
その体験をもとに、決意を新たに、自殺対策について質問をさせて頂きます。
平成23年3月に策定した「おおた健康プラン」では、「区民一人ひとりが生涯を通じて、健康で生きがいを持ち、安心して充実した生活を送ります」を理念として掲げ、区全体で健康施策を積極的に展開してきました。
事項別明細書169ページをご覧ください。
今年度の予算でもおおた健康プランの調査の区民意識調査として671万7千円が計上されています。
平成26年3月に策定したおおた健康プラン第2次からも3年が経ち、時期プラン策定に向けて庁内でも検討が始まっていくと思います。
【自治体の自殺対策計画】
①国の自殺対策基本法が改正され、自治体がそれぞれの地域の実情に応じた市町村自殺対策計画を策定する事を義務付けられました。
新たに策定するおおた健康プランと、区の自殺対策の関連について、お答えください
【答弁】
平成28年4月施行の改正自殺対策基本法におきまして、区は自殺対策計画を定めることとなりました。
平成30年度に策定予定の第3次の「おおた健康プラン」では、同法第13条第2項に規定されました「市町村自殺対策計画」を包含したものとし、区の総合的な自殺対策の推進を図っていく事としております。
【自殺未遂者支援 質疑】
②先般公開された自殺総合対策協議会の概要の中でも、三次予防としての未遂者・遺族支援とあり、「自殺未遂者が受診しても胃洗浄や外科的治療のみの場合も多い。未遂者は、次は確実な方法を選び死亡することがある。自殺未遂行動をとった原因を考えるとともに、どのような支援を受けられれば生きる道を選択できるのか、背景の問題まで遡って支援できる状況を目指すべきである。」とありました。
昨年の決算特別委員会においても、私は「自殺未遂者が精神科のない病院に搬送された際、また窓口に精神疾患などの相談等があった場合など、精神科を始め必要な支援に繋げる為の連携を強化していくべきと考えます」と質問し、理事者より「救急窓口のある区内医療機関に働きかけてまいります。」と答弁があった所です。
この間、区はどのように取り組んできましたか?お答えください。
【答弁】
先月開催された区南部保険医療圏の救急医療機関等で構成される「区南部保険医療圏地域緊急会議」に区は地元行政として参加し、自殺未遂者支援者に対応した場合における「東京都こころといのちのサポートネット」
事業の積極的な活用を依頼させて頂きました。
本事業は、自殺再企図防止のため、相談員が、自殺未遂者の搬送先となった医療機関と保健所や精神科医療機関等の支援機関とをつなく都の事業です。仲介にあたっては本人や家族の同意をとることから、支援機関側も着実な支援につなげやすく、区として積極的な活用が重要であると考えています。
このほか10月には、先進自治体である足立区の視察を行うなど、他自治体の取組についても情報収集を進めております。
今後も、機械を捉え区内医療機関に働きかけ、自殺未遂者の自殺再企図防止に取り組んで参ります。
東京都監察医務院
東京23区における孤独死の実態
【孤独死の男女比 対策の地域間連携について質疑】
③タブレット端末に配信したデータをご覧ください。
平成22年12月に東京都監察医務院の出した、『東京23区における孤独死の実態』によると、平成18年では男性2362名、女性1033名が23区内で孤独死しています。
男性では45~49歳の年齢階級で孤独死は100件を超え、以降に急激に上昇し、60~64歳で404名にもなります。
女性は70歳未満では100名を超える年齢階級は存在せず、70歳以降で初めて100件を超える事と大きく異なります。
孤独死の死後発見のデータについて、平成18年では女性が6.5日と一週間を切っているのに比べ、男性は約12日間と、2週間近い日数を要することが明らかになっています。発見年数は年々伸びており、男女で発見される日数に倍近い開きがあることは注目に値します。
60代以下の現役世代で、様々なコミュニティとの関わり合いが強いのは、一般的に女性の方であると想像できる一方で、男性は孤独におちいると同時に無縁にもおちいる傾向が強い事が示唆されます。
男性の平均である、発見が死後12日経ってから・・・どういう事だと皆様お考えになりますか?
非常に残念なことですが、ご遺体の臭いや住居の投函物が溢れかえるなどの理由でようやく気づかれるケースであろうと想像できます。
今まで、どんな人生を送って来たんだろう?
そこで暮らしていたのだろう?
どんな夢を持ち、笑い合っていたのだろう?
そんな人生をあざ笑うかのように、亡くなってからも何日もずっと誰にも見つけてもらえずに、一人、孤独に。
社会全体として、こうした悲劇は減らしていかなければなりません。
定年後の男性の孤独死件数が急上昇することからも、男性は労働以外で社会との結びつきを持つことが苦手であり、仕事のリタイアと同時に孤立におちいってしまう現状が想像できます。
先ほど、渡司委員から両親学級についての御話がありましたが、現役世代の社会参加の支援について、区はどのように考えますか?
【答弁】
高齢化が進む中、担い手不足により、運営が困難になりつつある地域活動団体が増加しています。
様々な知識、技術を備えた現役世代の方々は、こうした団体の担い手として活躍できる人材でございます。
しかし、仕事の忙しさや他者とかかわる事が面倒と考える人も多く、仕事以外での社会参加の機会に触れる事無く、退職を迎えるケースが少なくありません。
この傾向は、女性に比べて男性に多く見られ、大田区の世論調査では「区内の地域活動に参加した事がありますか」との問いに対し、地域行事・町会活動など多くの項目で参加した割合が女性の方が高い結果となっています。これまでの大規模災害では、頼りになったのは地域の中での助け合いだったといわれています。
安全・安心なまちつくりのためには、あらゆる世代が地域社会と何らかの関わりを持ち地域との結びつきを深める事がたいへん重要です。
また、現役時代に培った地域との関わりは、退職後にも活かされ、孤立化しないことにもつながります。
現役世代の社会参加の仕組み作りについては、NPO・区民活動フォーラムを始め地域活動団体等の事業、また、現在福祉部で進めている「生涯現役社会に向けたシニアの社会参加推進事業」の「地域ビューのつどい」、また、本年4月に開所する糀谷駅前の「シニアステーション糀谷」との連携を強化しながら、取組を進めてまいります。
【現役世代の社会参加促進について質疑】
④続けて現役世代の地域・社会参加の場といった点について触れさせていただきます。
H22年に決定された国のスポーツ立国戦略においても、若者をはじめとした成人スポーツ参加の促進が掲げられました。これは、スポーツ実施率の低い世代のスポーツ活動を向上させることを目的に、スポーツを通じて若者が交流の場を設けることを支援するものです。
区外から転居してきた方々や、今まで地域と縁遠かった方に、いきなり町会・自治会などを始めとする地域団体に参加を・・と言ってもハードルが高いものです。
まずスポーツや文化交流、また出会いの場の提供といった点から、趣味や活動を通し現役世代の地域参加を促していく事も大事ではないでしょうか?
先ほど、孤独死・孤立の話に触れました。
若者、現役世代の社会参加の支援はこうした問題をはじめとする様々な社会問題に対する社会的コストの低減にもつながっていきます。
運営についても、場の提供、環境の醸成といった側面支援に止める事により、多額の委託費の抑制にもつながり、民間の自由な発想が活かされやすくもなります。
スポーツをツールとして捉え、現役世代の交流支援を始めとする多世代にわたる交流についての区の考えをお聞かせください。
【答弁】
スポーツは体力の維持・増進や健康づくり、協議をする事だけが目的となるわけではなく、スポーツを通じて、参加者が協力し、汗を流し、楽しむ事でコミュニケーションをとるツールにもなります。
平成24年3月に区が策定した「スポーツ推進計画」で設立・運営支援が重点施策として位置づけられている総合型地域スポーツクラブは、その効果として、多世代にわたる人と人との交流や地域での助け合いなど、地域力を高めていく役割を果たし、地域の課題を解決する一助となる事が期待されております。
今後もこの計画に基づき、取り組んで参ります。
【同居人のいない男性の自殺リスクについて質疑】
⑥経済的、社会的に困難な状態に陥った男性の抱えるリスクの問題は、区内の自殺問題にも関係があると言えます。
平成21年~26年 大田区内全自殺者数865名のうち、男性612名、女性253名となっており、特に20代~60代は全ての年代で男性自殺者は女性の倍以上です。
同居人ありの方と同居人無しの方でも自殺者に男女の差が明確に出ており、年齢別でみると、同居人ありの場合が20代から60代まででは1・5倍から2倍の開きであるのに対し、同居人無しでは20代で男性が7倍、30代で2倍、40代で8倍、50代で10倍、60代で3倍となっています。
孤独を抱えた、あるいは社会的に重圧を負いながら、周囲に相談をしづらい立場の方は男女ともに多くありますが、特に男性に顕著なのだと思います。
このような同居人の有無による自殺リスクの差が見られることからもわかるように、家庭・交友・恋愛などを含む社会参加も自殺問題に深く関わっています。
社会参加の面からも総合的な自殺対策を進めるための調査・研究が必要です。
見解をお伺いいたします。
【答弁】
国の「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」のほか、大田区自殺総合対策協議会にも参画頂いているNPO法人ライフリンクの調査によれば自殺の10大危機要因には事業不振、職場環境の変化、過労、身体疾患、職場の人間関係、失業、負債、家族の不和、生活苦、うつ病があり、自殺の背景には1人あたり平均4つの危機要因を抱えていたと指摘されています。
原因と結果の関係は単純ではなく、複数の危機要因が複雑に影響しあうため、関連機関と連携して支援していく事が非常に重要と考えております。
自殺対策計画の策定にあたっては、様々な危機に的確に対応できるよう、社会参加を含め効果的な取組を研究してまいります。