区内の教育、および文化的・社会的経験の格差について
大田区議会平成29年第一回定例会において、私は区内の教育および文化的・社会的経験の格差について取り上げました。
文化の資本の再分配。
様々な理由で、文化や社会経験について触れる機会を失ってしまっている子供たちに、その社会経験や文化・スポーツなどに触れる機会を与えていくべきと私は考えています。
勿論、その為には受け皿となる環境整備や担い手の育成、支援も重要です。
子供に限定する必要があるわけでもありませんが、成熟した社会においては必要な事です。
また、区内の世帯収入と区内の進学率をもとに平均的な地区ごとの格差について算出し、区の認識について質問しました。
様々なご意見があると思いますが、格差や世帯ごとの収入の開きはあるのです。
私達は格差、開きがある事そのものを問題視するというよりも、貧困を始めとした格差から来る様々な不自由やデメリット、そのデメリットをどう埋めていくかを考え、注力をしていくべきではないでしょうか?
格差そのものをないものとして扱えば、その先の対策は打ちにくくなります。
皆様、どうお考えでしょうか?
東京維新の会 大田のおぎの稔です。
区内の教育、および文化的・社会的経験の格差について質問します。
子どもの貧困を巡る課題は大田区でも解決の必要のある重要な課題です。
先日、発表されたおおた子どもの生活応援プラン、大田区子どもの貧困対策に関する計画の基本的な考え方では、子どもの貧困対策では「基本的な生活に必要なものは何か」また「必要なものが満たされない状況が子どもにどのような影響を及ぼすのか」を多角的に捉えることを重視し、貧困が子どもにもたらしうる機会の喪失を、3種類の「剥奪」として分類しています。
ひとつは、経済的状況により子どもの学びや成長に必要な物が買えない「物質的剥奪」、次に子どもとして当たり前のように得ておくべき経験や、そこで得られるはずの人間関係が形成できない「社会的剥奪」
そして、それらにより育まれるはずの信頼感や自己肯定感などが持てない状態「自己形成の観点からの剥奪」です。
これらは家庭や本人の努力だけでは改善することが難しいため、社会全体で対策を図るべき課題でもあると示されました。
私は貧困対策に社会的な経験や自己信頼感の重要性が追加されたことは素晴らしい事であり、この調査が子供の貧困対策に活用されていく事を期待していますが、そのために区内の教育、経験の差の現状ついても、目を向ける必要があると考えています。
その事例のひとつとして、数値の上ではどのような状況が見て取れるのかをお話したいと思います。私自身、高校卒業後、専門学校に通い社会に出た身であり、個人の将来選択の自由と多様性が尊重されるべきであることに疑いの余地もないことは重々承知しておりますことを、あらかじめ申しあげておきます。
古い数値ですが、1998年の住宅需要実態調査個票データでは、世帯年収のデータが丁目単位で示されています。この世帯年収データと、2010年の国勢調査から算出した、大学卒業者数あるいは短大・専門学校卒業者の区内在住者の割合とを比較しました。
人口の少ない町名を除いた54か所のうち、短大・専門学校、大学卒業者数の割合は大田区全体で35.4%
その中で40パーセントを上回る地域が20か所、逆に30%を下回る地域が18か所ありました。
世帯年収と進学率を比較すると、高所得世帯の多く住む地区ほど進学率が高く、低所得世帯の多い地区ほど進学率が低いことが確認され、大学卒業者のみを対象としたデータでも、大田区全体が23.2%となっており、地域ごとの数値で同様の傾向を確認しています。
明らかに、進学の機会において大田区内でも地域による違いが見て取れます。
仮に区内の地域ごとに進学という選択の選びやすさに違いがあるとすれば、その違いによって子供たちが自ら将来を選ぶ権利を最大限尊重することが困難になっている可能性もあります。
本人の選択の自由は尊重されなければなりませんが、義務教育期における基礎的な学力形成と、義務教育以後の進学や将来選択の多様性は密接な関係にあり、小中学校における取り組みも重要です。
現在の学校の中での生徒一人一人に応じた様々な取組についても評価いたしますが、それと共に、平均的な地区ごとの収入差の開きと、それがもたらす影響を考慮したうえで、大田区全体の課題として大きな視野で対策を講じていく事も必要かと考えますが、見解を伺います。
平成23年第一回定例会において、他委員の「経済格差が教育格差を生んでいるという認識に対してどのような印象をお持ちか」との質問に対し、当時の教育長は「家庭の経済状況は環境の一つであるが、全てではなく、心に余裕の持てる家庭環境がつくれるかどうかということが、子どもの意欲に大きな影響を与えていると思っております。」と回答しています。
様々な経験や人とのつながりから来る心の豊かさの形成も子供の貧困対策においても大きな課題です。
さて、参考程度の情報ではありますが、電話帳から習い事、学習塾などの地域ごとの数も調査しました。
大森・蒲田駅付近の地域が突出しているのを除くと、習い事や学習塾の数などにも地域ごとの違い、特色も見て取れました。
中にはそうした特色になじめない子もいるでしょう。
家庭の経済力や地域の特色などによる差は教育の機会だけでなく、社会的経験の蓄積などの偏りや、、そこから生じる差にも繋がっているとみる事も出来ます。
これらは冒頭でお話した3つの剥奪、すなわち「物質的」「社会的」そして「自己肯定感の剥奪」につながっていくとも考えられます。
周囲の環境や家庭の収入に関わらず、文化的・社会的な体験を子ども、若者に平等に提供するために、区は地域ごとの違いやニーズを把握し、スポーツ・文化振興・世代間交流などについて、受け手だけでなく担い手、その受け皿などについても積極的な支援を行い、学校や地域で、教育の機会だけでなく、文化的・社会的な体験を提供していくべきではないでしょうか?見解を伺います。