多額の赤字とどう向き合う?コミュニティバスの在り方は?
写真は大田区HPより引用
先日、たまちゃんバス(コミュニティバス)について、交通・臨海部活性化特別委員会に運行実績の報告がなされました。
所属は今年度は変わりましたが、私の住んでいる矢口地域に、先行的に施行運転として導入された事、馬込、西蒲田などの交通不便地域の解消も大田の交通政策にとって重要な課題であると認識している事から、引き続き、どのような報告がなされるのかを注視していました。
私はこの運行実績を見て、何らかの対策、収支改善が見られなければ、このコミュニティバスを大田区内の他の地域に広げていくのは、難しいのではないかと考えています。
広告、周知を重ね、6年間の運用をしてきた結果としての成果自体は出てきていますが、頭打ち感も否めません。
コミュニティバスの収支を全て黒字にするというのは難しいかもしれませんが、今後大きな収支状況の改善は難しいだろう事を考えると現状のまま路線を広げていく事は、区にとって大きく赤字を増やす事になってしまいます。
利用者とそうでない方の受益者負担のバランスもおかしく、このまま区民の理解も得るのは難しいと認識しています。
実際に私の所にも区民の方からも厳しい声が寄せられております。
以下、報告のあった運行実績、データです。
・たまちゃんバスについて 大田区 HPより
●基本情報
たまちゃんバス
運行経路:武蔵新田駅~下丸子・矢口循環~武蔵新田駅 計6.77km
運賃:大人150円 小児:80円
停留所数:14か所
ダイヤ:始発 7時50分 終発:18時46分
※平日・土曜休日同一ダイヤ
一周:約40分 一日18便(運行間隔約40分)
小型ノンステップバス(全長7m)、定員34名
運行事業者:東急バス株式会社
★運行実績(H274.1~H283.31)
運行便数:6,588便
利用人数:56,370人 一便あたり8.6人、一日あたり154.0人
収入:6,824,333円(運送収入 6,734,333円、広告費90,000忍)
支出(経費):16,453,423円
収支欠損額(赤字):9,629,090円
・利用状況
平成24年度 利用者数:44,767 運行本数:6,922 平均乗車人数:6.5
平成25年度 利用者数:47,262 運行本数:6,934 平均乗車人数:6.8
平成26年度 利用者数:55,172 運行本数:6,570 平均乗車人数:8.4
平成27年度 利用者数:56,370 運行本数:6,588 平均乗車人数:8.6
矢口主張所管内の住民基本台帳登録数で比較すると平成27年度は一年間で一人約1.33回乗車している計算になります。
・収支状況
平成24年度 収入総額:5,659,764 収支欠損額(赤字):9,928,097
平成25年度 収入総額:5,890,193 収支欠損額(赤字):10,680,703
平成26年度 収入総額:6,703,638 収支欠損額(赤字):9,004,918
平成27年度 収入総額:6,824,333 収支欠損額(赤字):9,629,090
画像は大田区HPより引用
先日の委員会の切り替え時期でもある、平成28年5月の臨時会で、交通・臨海部活性化特別委員会の中間報告書でも、委員長名で以下のような報告がなされました。
参考:おおた区議会 特別委員会 中間報告書
http://www.city.ota.tokyo.jp/gikai/iinkai/chosa_28/28iinkai_houkoku.html
②たまちゃんバスについて
平成 21 年 10 月に、交通不便地域における移動手段確保の観点などから、「たまちゃ んバス」の運行を矢口・下丸子地域において開始した。委員会において、運行状況や利 用状況などについて、審議を重ねてきている。 区からは、平成25年度から平成27年度上半期までの輸送実績と分析の報告があった。 その中で、年々利用者数が増加しており、平成 25 年 10 月より 24 か月連続で対前年同 月比の利用者数がプラスの伸びを示していること、また、1便あたりの利用者数が平成 25 年度の 6.8 人から平成 27 年度上半期は 9.2 人に増加しているという報告があった。 3/7 委員からは、いつまで試行運行を行うのかという質疑があり、区からは、地域への周 知がまだ足りないと認識していることから検証を続けるという答弁があった。 また、利用者及びバスルート地域住民に対するアンケート調査で、「武蔵新田、下丸 子駅以外の接続」を望む意見が多いことについて質疑があり、区からは、既存バス路線 との競合や、蒲田駅への接続はコミュニティバス本来の趣旨から離れるといった答弁が あった。 本委員会としては、たまちゃんバスの利用状況や、作業部会の動向を注視し、地域の 方々がより利用しやすいものとなるよう、今後も引き続き検討を行い、交通空白地域の 対策については区全体の中で総合的に調査・研究していく。
私も、交通・臨海部活性化特別委員会に所属していた昨年度は、毎回のようにコミュニティバス(たまちゃんバス)について議題に上がるたびに、質疑、議論を重ねてまいりました。
蒲田や大森周辺にある、区役所や文化の森、さぽーとぴあ、都税事務所などの区内重要施設とのアクセスを行った方が、利便性も向上し、収支も改善するのではないか?と何度も訴えてまいりましたが、報告書にあるとおり、コミュニティバスの本来の趣旨から外れると、委員会でも回答があった所です。
(と言うかこれ、私が毎回うるさいから書かざるを得なかったんじゃ)
たまちゃんバス、私も乗車しましたがピーク時以外は、バスの乗客は定員に比べてかなり少ない時間帯もあり、見かけた地域の方から厳しい意見も頂きます。
私は矢口地域だけを見ても、駅から離れた場所に大型マンション建築などで人が増え続けている事、今後大田区でも高齢化が一気に進んでいく事からも、コミュニティバスは必要だと認識しています。
しかしながら、大きな収支改善が見られない事からも、現状からの変更は必要だと認識しています。
確かに、民間が通している路線、バス停があるところと同じ個所に運行する事は、民間との競合、民業圧迫にもなるというような答弁は区からもありました。
基本、民間でできる事は民間で行い、足りない部分、どうしても必要な部分を官がカバーするというのは、押さえておかなければならない、基本政策だと思います。
運賃値下げを要望する声がありますが、民間に比べて運賃を安くし過ぎる事もまた、不平等を産み、民業圧迫となるでしょう。
しかし、以前、コミュニティバス選定地域として矢口地域の他に南馬込、西蒲田地域が挙がり、他にも検討地域として久が原、池上、中馬込、糀谷、田園調布地域などの名も挙がりました。
これらの地域では、今後、路線増加が期待されるところでしょう。
とはいえ、一路線あたり約900~1000万近い赤字を出す路線を次々と増やしていって良いとは思えません。
例えば、条件が違うので一概には言えませんが、杉並区を3路線、南北に走る「すぎ丸」は平成12年に始まり、3年間で黒字化しております。
商店街や住宅地を通りながら、JR阿佐ヶ谷駅と京王井の頭線浜田山駅を結ぶルートを含め、3路線あり、こちらはいずれも、直接つながっていない駅と駅の間を結ぶルートです。
現在のたまちゃんバスは、同じ東急多摩川線の隣駅である下丸子-蒲田間も結んでおり魅力を感じない方も多くいるのではないかと思います。
(交通不便地域の解消なので、矢口2~3丁目、下丸子1~2丁目など駅から遠い地域と駅を繋ぐという意味では間違ってはいないのですが)
駅から遠い公共施設へのルートや駅と駅で分断された地域との接続、また、区内の要所である区役所等と結ぶルートやバス運行地域の近くであるなら、他自治体の主要駅へ向かう民間のバス停等とのアクセスなど、特別出張所管轄地域の枠組みを超えた、コミュニティバスの運行を行うべきだと思います。
そうすれば、利用客ももっと増え、収支も更に改善していくのではないでしょうか?
今後、議題となっていくであろう、コミュニティバスの運用。
引き続き、注視し、より良い運行バス運営が出来るよう、区民の皆様の声を聞きながら、訴えを続けていきます。