18歳未満の受け入れ先が重要。関東医療少年院から見えた事
罪を犯した少年少女への支援はどうあるべきか④
府中市にある関東医療少年院を視察してきました。
関東医療少年院は、第3種※および第4種少年院に該当しています。
主に収容されている少年は第3種少年院に該当する、心身に著しい障害を抱えた男子、女子です。
病気、ケガや障害者手帳によって認定される障害を持った方だけでなく、精神的情緒不安定者や、妊娠をした女子なども含みます。
※
【第3種少年院】
保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のものを対象とする。
【第4種少年院】
少年院において刑の執行を受ける者を対象とする。
http://www.courts.go.jp/saiban/qa_syonen/qa_syonen_22/index.html
処遇の内容も、他の少年院や鑑別所と違い、専門的な医療行為と教育を行う少年院の医療センターとしての役割を持っています。
医療機関とも連携をしており、手術や出産、長期入院などを提携医療機関で行い医療少年院に戻る事、関東医療少年院での措置の後、一般の少年院に移送される場合も半分程あります。
今回、関東医療少年院での少年への処遇、少年を巡る環境などの説明を受けて、私は罪を犯した18歳未満の少年達の受入れ先、支援をどうしていくかも真剣に考えていかなければならないと認識をしました。
なぜなら、罪を犯し、少年院に送致される少年たちの中には家庭環境に問題を抱えた少年も多く、そのまま家庭に帰すことに問題がある場合や、親が受け入れを拒否するケースもあり、事情が事情、かつ専門的な医療支援を必要とする少年が多いため、更生施設や児童養護施設での受け入れが難しく、社会的な自立の難しい18歳未満の少年達に更生保護による支援が届きにくいからです。
関東医療少年院には精神科、内科、外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻科などの施設が揃っており、常勤、非常勤を合わせて、医師、看護師、精神保健福祉士の方々が勤務しており、ナースステーションのような部屋もあります。
そうした特別な医療的ケアを受ける必要のある少年たちが移送されますが、彼らのうち、ケガや障害など身体的な医療行為を必要とするものは約3割、残り7割近くは精神的な疾患や障害を抱えた少年達です。
精神的な疾患は、完全な回復というのは難しく、場合によっては長期的なケアが必要となります。
結果、出院後、福祉のお世話になる少年も沢山いるのですが、今まで、福祉的な支援を受けられたはずなのに、本人や親が拒否、また、無理解だったために受けられなかった・・・というケースも多々あります。
また、少年達のうち、実父母率は約3割、7割は父子および母子家庭となっており、経済、家庭環境などから、出所後の受入れが難しい場合も多くあります。
出院後の引受先が見つからなければ、在院期間も伸びてしまうのですが、家族の受入れが難しい場合、また、家族の下には返さない方が良いのではないかと言う判断をする場合でも、18歳未満の法的にも自立が難しい少年たちの受け入れ先を探すのは至難の業です。(結果、家庭に帰すことに)
生活保護の問題などでも、同様のケースが発生する場合があるのですが、もともと住んでいた自治体以外で福祉、受け入れ先を探そうとした場合、自治体側が支援、受け入れを拒むケースもあります。
自治体間のそうした拒否は起こさないように気を付けなければなりません。
もちろん、罪を犯した人間は罰を受ける事が償いの一つであるという意見。
罪を犯した少年への罰が軽すぎるという主張や、未成年の罪については、家庭、両親にも大きく責任があり、家庭で責任をもって育てなおす、しつけしなおすべきだという主張がある事も重々、承知しております。
特に、家族が責任を持つという意見については日本では根強く、また、更生の為に根性を叩きなおすのだと、過酷な教育を施そうとするケースも実際に聞いています。
極端な例まではいかなくとも、就労や、進学などで、今までと違う環境や、集団生活、自立した環境に身を置く事で、更生をした方も実際におり、関東医療少年院も出所後の一番の行き先は元々の家庭です。
しかし、本人の努力だけではどうにもならない場合、家族、周りの環境に真の問題、病巣がある場合、その環境、家庭にそのまま返してしまっていいのでしょうか?
どうしても酷い環境の場合は、一時的にでも引き離し、保護し、更生、自立支援を促す施設、機関。児童養護施設に入るのが難しい、様々な要因を抱えた少年たちの為の駆け込み寺の様な施設も必要になってくるのではないでしょうか?
7割が精神疾患などを抱えた少年達であると、上述しましたが、親に悪意や問題が無い場合でも、精神疾患の特性から小さいころから子供を育てにくく、親とのコミュニケーションが取れなかった場合や親が精神疾患を抱えており、子供と充分なコミュニケーションが取れなかった場合もあります。
少年個人の罪なのか?
病や環境が産んだ罪なのか?考える必要があります。
余談ですが、下の作品は関東医療少年院に飾られている少年たちの作品です。
関東医療少年院は医療センター的な役割を担う施設である為、他の少年院の様な資格取得、実践的な就労訓練は行っていませんが、こうした彫刻、陶芸など作品制作は行っています。
2013アジア国際子ども映画祭IN南あわじ市では、関東医療少年院の少年たちが作成した、映像作品
「きみといっしょ」が杉良太郎賞を受賞しており、リンク先から無料で視聴頂けます。
最後に。
今回の視察では、更生保護と言う点だけでなく、以前、視察をさせて頂いた通信高校、児童養護施設の抱える課題と同じ課題も見えました。
中学までは義務教育でもあり、特別支援学級、先生の目も向くが、中学まで何とか普通科、一般科で頑張ってきた子供たちも高校では苦しみ、学校を途中でやめてしまうケースもある。
更生保護、罪を犯した少年と言うだけではなく、精神的に困難を抱えた子供たち、人間関係、コミュニケーションに難を抱えた子供達への支援をもっと手厚く、柔軟に行っていく必要があります。
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