殺処分のない社会を目指して~動物虐待防止と不妊・去勢手術助成について質問しました
写真は東京都の遺棄・虐待防止ポスター
こちらからご覧頂けます。
6月10日に開催された大田区議会平成28年第二回定例会、一般質問において、私おぎの稔は動物愛護問題における区の取組について質問しました。
内容は動物虐待への普及啓発と不要な繁殖を避け、殺処分を減らす為にも行われている猫の不妊・去勢手術助成金の二つになります。
【動物虐待】
動物愛護問題に触れる中でまず、動物虐待について区の役割について質問しました。
ここ数年、大田区内で起きた動物虐待、殺害事件を報道で目にした方も多くいると思います。
私も子供の頃、犬猫と暮らしていましたから、他人事のように思えず、本当に悲しく、心苦しい思いです。
虐待事件となると、警察の管轄となり、自治体の役割は未然防止の為の教育と言った普及啓発、警察との情報交換、連携などになってくると思いますが、大田区の行っている動物愛護などの広報・啓発において、動物虐待に触れている個所は殆どありませんでした。
理由として都が広報をやっているからという事もあるのかもしれませんが、東京都の行っているポスターやHP、デジタルサイネージなどを利用した広範囲への啓発だけでなく、区市町村といった身近な自治体での広報、区が獣医師会等と協力し、実施するようなしつけ教室等の指導や教育等の中でも動物虐待防止について、啓発を行っていくべきだと思います。
答弁では、区報やHPなどで啓発方法を充実させていくとの回答がありました。
取組の充実を期待するところです。
(写真は依然、保護猫シェルターにお伺いした際の物です。)
そもそも動物虐待とは?
答弁にもありましたが、区が判断に使っている環境省の資料(動物の遺棄・逆値事例等調査報告書)には、積極的(意図的)虐待とネグレクトといった、身体的・精神的苦痛を動物に与える行為が「虐待」と定義されています。
報告書には「動物の福祉」という言葉もありました。
私も聞きなれない言葉でしたが、動物の福祉は「肉体的・精神的に十分に健康で、幸福であり、環境にも調和していること」と定義され、5つの自由、5つのニーズ、5つの飼い主の責任が示されていました。
例:
5つの自由
・飢えと渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み、負傷、病気からの自由
・恐怖からの自由
・自然な行動(本来の習性を発揮する)自由
動物にとっての福祉。
幸福な環境が保障され、人と動物が共に生きていける社会を作る為に、今後も声を上げていきたいと思います。
※質疑の中でも触れた、福岡猫虐待事件(こげんたちゃん事件)、犯人が実況中継のようにネット上にまだ子猫とみられる野良猫を虐待した写真を掲載し、遺棄した事件です。
この問題は大きな社会問題になり、後の動物虐待事件への判例にも影響を与え、ネットを介し、特に若い世代の動物愛護運動の機運の醸成にも寄与しました。
今、現在でも事件名やこげんたの名前で検索をすると、目を覆いたくなるような当時の画像が出てきてしまいますので検索はおすすめしません。
もし、される場合は自己の責任に基づいてお願い致します。
【猫の去勢・不妊手術助成金】
大田区では飼い猫、飼い主のいない猫の不妊・去勢手術に対して、助成金を出しています。
27年度は1643匹に対して手術を行い、区の助成金額は969万3千円と、1000万円近いお金が使われていますが、そもそも、なぜ、猫の去勢・不妊手術に行政がお金を出すのか?
大田区猫の去勢・不妊手術助成要綱に、助成金の目的は「猫の不必要な繁殖及び飼い主のいない猫の増加を抑え、近隣に対する危害及び迷惑の未然防止を図る事により、動物の愛護及び管理についての意識の高揚、公衆衛生の向上、並びに社会生活の安定に寄与する」とあります。
特に飼い主のいない、野良猫が繁殖し街にあふれ、あちらこちらに糞尿があり、食べ物を散らかしたりする状態は衛生的とは言えません。
子供などが近づき、手を伸ばし、意図せず危害を加えられてしまう場合もあるかもしれません。
愛護の点だけではなく、環境保全、公衆衛生の向上との点からも、不要な繁殖を抑える施作は必要になり、その一つとして手術にお金を出しているという事になります。
一方、質疑でも触れていますが、改善点も多くあり、大田区は全体の約6割の獣医師会加盟医のいる病院でしか猫の不妊・去勢手術は受けられません。
23区でも例えば台東区は動物病院の規制が無く、どこの病院で手術を行っても助成金を出しています。
約1000万円近い、税金が使われている猫の不妊・去勢手術が、獣医師会加盟獣医師のいる病院でしか使えないという事が税の使い道として公平なのか?
区民の選択肢を奪っていないか?との考えもあります。
今回は質問の中では特に区長の指定する指定獣医師の対応について触れました。
指定獣医師に飼い主のいない猫の手術を断られたケースがあるとお話を聞いたことから、指定し、業務委託をしている区の見解を質しました。
H27年度の助成金増額時に改めて、獣医師会に確認し、要綱に反する行いがあった場合には然るべき対応をすると答弁を頂きました。
多くの獣医師さんは、命を預かる大切、そして大変なお仕事を行っていただいていますが、中には心無い方がおり、区民の皆様から疑念を抱かれる事態も生じてしまっています。
しっかりとした対応をお願い致します。
(写真は依然、保護猫シェルターにお伺いした際の物です。)
最後に地域猫の問題にも質問で触れたかったのですが、時間が無かったので、別の機会に行えればと思っています。
大田区内では下丸子、調布地域などでも、地域猫活動は活発に行われていますが、現状の地域猫活動は核となる方への負担が大きく、支援が望まれています。
活動を広げていく上では地域、町会・自治会の理解・協力も必要不可欠ですが、現状は自治会・町会ごとに温度差があり、積極的な場合とそうでない場合があります。
若い方を中心に関心の高い、地域猫活動。
地域活動の中に組み込んでいただければ、自治会・町会の活動の宣伝にもなり、意義の理解、新たな加盟増加にもつながると思います。
地域猫活動の普及啓発にも、取り組んでいきたいと思います。
● 大田区議会 第二回定例会 一般質問 内容
【質問 荻野稔】
動物愛護は虐待、不要な繁殖を避け殺処分を減らすための取組みについて伺います。
以前、区内で起きた動物を虐待、殺害した事件が報道された際、区にも問い合わせがあったと聞いています。
動物虐待は、インターネットの普及も伴い、注目を増してきました。
そのキッカケの一つに2002年に起きた、福岡猫虐待事件があります。
犯人が子猫を虐待・殺害した写真を実況中継のようにネット上に公開したこの事件は、逮捕や実刑を求める嘆願書が3000通を超え、裁判にも多くの方が傍聴に駆けつけるなど社会問題にもなり、犠牲になった野良猫にはネット上で「こげんた」という戒名がつけられました。
虐待問題は警察、司法の管轄も大きく、自治体の重要な役割として普及啓発があると考えます。
動物愛護関連記事が5月発行の大田区報でも掲載されましたが、現状、動物虐待に対する大田区の広報は少ないと思います。
大田区の動物虐待への認識と区の果たすべき役割について見解をお伺いします。
次に不妊・去勢手術助成について伺います。
大田区猫の去勢・不妊手術助成要綱にある通り区では、獣医師会が提出した名簿に記載のある獣医師を区長が指定した「指定獣医師」が猫の去勢・不妊手術を行った場合飼い猫に対してはオスが3000円、メスが6000円、区が補助し、更に双方に獣医師会負担金が加わります。
飼い主のいない猫の場合はオス、メス共に倍の額を補助します。
27年度から増額され現在の額となった、制度の実績についてお答えください。
また、区内の約6割にとどまる、指定獣医師の勤務する動物病院にだけ補助金が出されてよいのか?との疑問もあり、もっと使いやすい制度にするべきだとの指摘も、以前、行われていたところです。
区から指定を受け、助成を受ける指定獣医師には規定に沿った対応が望まれますが、飼い主のいない猫の手術を断られたというお話も以前お聞きしました。
増額にあたり、区は獣医師会とどのような取り決めを行いましたか?
要綱に「区長は指定獣医師がこの要綱の目的に反すると認めた時は指定を取り消すことが出来る」とあります。
問い合わせがあった場合、どのように対応しますか?
お答えください。
【答弁概要 保健所長】
私からは動物愛護についてお答えいたします。
まず区における動物虐待への認識についてですが、環境省が示す動物虐待の例には動物に対する意図的暴力やネグレクトなどの行為が挙げられております。
区といたしましてもこの例示に準じて判断しております。
区の果たすべき役割としましては、動物の虐待防止、及び動物による人への危害防止等の観点から、飼い主へ適正飼養について普及啓発するとともに、区民からの通報や問い合わせには速やかに現場確認を行い、指導を行うと共に、犯罪性が認められる場合には警察と連携して対応しております。
尚、昨年度は虐待が疑われるという情報提供が8件ありましたが、速やかに調査を行った結果、実際に虐待が行われていたケースは一件もございませんでした。
今後は区報やHPなどに動物虐待防止に関する内容を盛り込み、啓発方法を充実させてまいります。
次に猫の不妊・去勢手術の平成27年度の実績につきましては、飼い猫、飼い主のいない猫を合わせて1643匹に対して手術を行い、これに対する区の助成金額は969万3千円となりました。
手術数につきましては前年度から270匹の増加になっております。
次に区と東京都獣医師会との取り決めについてですが、区長が指定した指定獣医師は、飼い猫および飼い主のいない猫に係らず、猫の去勢・不妊手術を実施するという事を改めて、確認しております。
区民から飼い主のいない猫への不妊・去勢手術を指定獣医師から断られてしまったとのお問い合わせを頂いた時には、速やかに獣医師会に照会をし、事実確認を行います。
その結果、当要綱に反する行為が認められた場合には、獣医師会に改善策を講じるよう指示するとともに、然るべき対応を致します。
私からは以上です。
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以前のブログ
・殺処分のない社会に向けて~動物愛護センターを視察してきました。
・殺処分のない社会を目指して~保護猫シェルターの活動~
・事件は市場で!?市場と猫の共存は?~殺処分のない社会を目指して~
・殺処分のない社会を目指して~保護犬譲渡会に参加しました。
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