殺処分のない社会を目指して~保護猫シェルターの活動~
先日の動物愛護センター視察に続き、大田区蒲田にある保護猫カフェとらくん、そして、大塚にある東京キャットガーディアン様の運営する保護猫シェルターにお伺いしてきました。
全体のお話と、大田区の課題についてもお話ができとても有意義でした。
以前のブログ 動物愛護センター視察時のブログです。
殺処分のない社会に向けて~動物愛護センターを視察してきました。
●保護猫カフェ
当猫カフェ 「とらくん」では、猫の保護譲渡活動をする東京キャットガーディアンと提携し、行政から引き取られた猫の里親募集に協力しています。 その活動で、殺処分される猫を1匹でも多く引き取り、命を救う努力をしています。
しかし、店内で収容できる数には限度があります。 そこで、里親さんを募集し、親切な里親さんが見つかり次第、猫スタッフには当店を卒業してもらい、行政からの少しでも引き取れる数を増やし、1匹でも殺処分される猫を救いたいと考えています。
猫カフェとらくん HPより引用
保護された猫たちの居場所を維持しながら、
カフェとしても運営している猫カフェ。
蒲田駅東口からほど近いところにありますので、是非、遊びに行ってみてください。
一人でも気軽に立ち寄れます。
珈琲、おいしかったです。
猫カフェは楽しみながら、シェルターは落ち着いて、大切なパートナーを探す場とご紹介も頂いた事もあり、
より保護、引き渡しに注力をしている保護猫シェルターにも行ってきました。
●保護猫シェルター
東京キャットガーディアン様運営の保護猫シェルター。
猫たちと触れ合う事も出来ます。
ここで時間をかけて、パートナー探しをする方も多いようです。
この子たちはみんな、保護された猫たちなのですよね。
小さい猫は別の部屋で保護・飼育されています。
年間200~300匹、ピーク時は400匹の猫を保護しているという東京キャットガーディアン様、
これだけの猫を保護していますが、行政施設側からの情報提供はなく、各施設に御用聞き、毎朝のように電話をし、施設で保護された猫の状況を確認しているそうです。
保護をする優先順位としては、処分待ちの子。
殺処分の期限が迫ってる子から優先的に保護をします。
以前は乳飲み子、幼猫の譲渡を施設は行っておらずその事も処分の多さに関係がありましたが、現在は、担当者が変わり、信頼のある団体には譲渡を行っているそうです。
ペット保険のチラシもおかれていました。
【大田区の問題点と行政の取り組み】
千代田区の殺処分ゼロ、地域猫の取組も脚光を浴びていますが、
問題は高層マンションを抱えた住宅街ではなく、下町・繁華街を持つ区の方が大きいそうです。
大田区、江東区、墨田区、荒川区と言った区が該当します。
飲食店と物販、惣菜、食料品店が立ち並ぶ、下町の商店街と隣接する住宅街。
こうした地域は猫にとって餌も豊富、生息・繁殖もしやすく、また、餌やり、去勢の管理の難しさから糞害を始め、大きな問題を抱えています。
●餌やりさん
下町・繁華街は、特に猫に餌を上げる方が多く、本人たちに飼っているという自覚もないため、野良猫の繁殖、衛生管理等から見ると大きな課題になります。
地域猫は簡単に言うと、ここから、猫への餌やりをしっかりと管理、去勢や清掃活動も行い、地域・コミュニティで猫を支援し、飼育していくというものです。
●大阪市や京都市の餌やり禁止条例の動きと議論
大阪では議論の俎上に上った「餌やり禁止条例」(議会提出はされず)
京都市では野良猫への不適切な餌やり禁止条が平成27年3月に可決。
色々と議論はあると思います。
確実に、猫による糞尿や病気等の被害はあり、衛生上の懸念もあります。
しかし、たとえ餌やりを罰則付きで禁止しても小動物をかわいがるという感情を人の心から消すことは不可能に近く、そのような人の善意を完全に無くすことはできません。
行政の目をくぐって、餌を与え続ける方は残るでしょう。
捕獲等で猫を一時的に減らすことが出来ても、繁華街・下町と言う猫にとって好条件の住処は残り続けるわけですから、その地域を縄張りにしている野良猫がいなくなった後に、外からの猫の流入が一斉に起こる可能性があり、一気に大量繁殖する危険もあります。(バキューム効果)
動物愛護だけではなく、環境保全という面から見ても、餌やりを禁止することにはかえって状況が悪化しかねない問題があります。
一方で、荒川区の「荒川区飼い主のいない「猫不妊去勢手術助成事業」は効果を上げています。※
不妊・去勢手術だけではなく、餌やりや清掃を管理し、定期的に行う事を区が奨励する仕組みになっており、5年間で約1800件の猫の不妊・去勢手術、猫の死体の報告、殺処分も約半減となりました。
この制度、同様の制度が依然から23区で存在していますが区によって、手術代金の助成額はバラバラです。
対象も飼い主のいる猫、いない猫、両方と自治体によって異なります。飼い猫とそうでない猫で額も違います。
関心のある方は、お住いの自治体にお問い合わせください。
※誤解されていますが、荒川区の条例はいわゆる餌やり禁止条例ではありません。
参考:【大田区】
●飼い猫
オスの去勢手術 1匹 4,000円 (内訳 区助成金3,000円、獣医師会負担金1,000円)
メスの不妊手術 1匹 8,000円 (内訳 区助成金6,000円、獣医師会負担金2,000円)●飼い主のいない猫
オスの去勢手術 1匹 7,000円 (内訳 区助成金6,000円、獣医師会負担金1,000円)
メスの不妊手術 1匹 14,000円 (内訳 区助成金12,000円、獣医師会負担金2,000円)【品川区】
●飼い猫
オス: 8,000円(区助成4,000円 獣医師会助成4,000円)
メス:区助成16000円(8,000円 獣医師会助成8,000円)●飼い主のいない猫
オス(去勢):5,000円
メス(不妊):10,000円【千代田区】
●飼い主のいない猫のみ
雄:17,000
雌:20,000
妊娠中:25,000を上限とする【世田谷区】
●飼い猫不妊手術(メス)の場合 6,000円
去勢手術(オス)の場合 3,000円
●飼い主のいない猫
不妊手術(メス)の場合 10,000円
去勢手術(オス)の場合 5,000円
江戸川区は最近になって助成制度を新設と、全ての区で制度があったわけではありません。
●手術する病院、医師の確保
外猫にしっかりと対応できる病院は多くはありません。保護活動をしていて、猫をかえって傷つけてしまうような処置が行われてしまう現場を見た事もあるそうです。
家猫と外猫は全く違う。外猫への知識や対処した経験のない病院もあります。
病院側も手術費用が安く、家猫に比べて困難な手術に対し難色を示す事もあるそうです。
東京キャットガーディアン様も個別に病院と提携しているとの事でした。
●どうあるべきか?
都内では千代田区が2010年から殺処分ゼロ。管理者をしっかりと作ったうえでの地域猫活動が成果を上げました。
国立市は2012年から殺処分ゼロを実現。助成制度が少ない中(2013年からスタートしオス3000円、メス5000円を上限。)ゼロを実現できたことは素晴らしい事だと思います。
国立市も、餌やりを禁止したわけではありませんし、捕獲に注力したわけでもありません。
地域猫活動をしっかりと行ったことが成果を上げています。
地域猫活動の支援と補助、啓発の強化。
外猫手術を行う病院の指定、育成、支援。
手術代の補助、地域猫、ボランティアや支援団体の応援。
猫が嫌いな人ではなく、猫が嫌いな人を増やしてしまう人も残念ながら多くおり、そういった方々が猫への排除の空気を作ってしまう面もあります。
餌やりそのものを禁止するというより、地域社会で猫を育て、管理・環境保全を行っていく仕組みが必要であると考えます。
他にも色々とお話を聞かせて頂きました。
大田区は大田区産業プラザpioでインドアの譲渡会が行われた都内初の自治体とお聞きしました。
猫付きのシェアハウスや住宅物件、盲導犬についても貴重なお話を頂きました、その点も後日ブログにまとめようと思います。
動物愛護問題は引き続き、追跡調査を行います。