再び家族を失って~平成29年予算特別委員会質疑【自殺・地域猫】
本日の大田区議会予算特別委員会での質疑です。テーマは動物愛護問題と自殺対策について
2月20日、父方の祖母が自ら命を絶ちました。
学生の時に母方の祖母を自殺で失った自死遺族として生きてきた私は、その経験を胸に自殺対策、遺族・未遂者支援に取り組もうと訴えてきましたが、自分の無力さを今回思い知りました。
高齢の祖父への介護疲れ・・・老老介護と言われる状態が原因ではないか?と聞かされました。
目に見えない誰かの自殺を止めよう、そう訴えてきた私は目に見える家族の自殺を止める事が出来なかった。
葬儀は本会議の日程と重なっており、そもそも物理的にも難しかったのですが、自殺対策と声高に叫んでいた自分が、いったいどの面を下げて、自殺した家族の葬儀に顔を出せるのか?
結局、参列することは出来ませんでした。
老老介護。介護をする側、される側。
なかなか声を出しづらい、声を聞いてくれる方が周りにいない状況だったのかもしれません。
たった一人でいい、自分の味方がいてくれたら。
誰か一人で良いから、ずっと心に抱えてきた、自分の声を聞いてくれたら。
それが出来なかったことを後悔しています。
以下 質問文
東京維新の会 おぎの稔です。
本日は衛生費、動物愛護と自殺対策について質問をさせて頂きます。
・地域猫活動
①地域猫活動がメディアでも取り上げられ、大田区でも活動が行われていますが、一方で、活動を知らない方や地域の方との間でのトラブル、活動維持の大変さなど、課題についてもお聞きします。
他区の先進事例や成功事例もお聞きしますが、大田区には大田区にあった課題解決、取り組み方があり、まず大田区全体で共通的なルール作成・活動の定義づけなども行う必要がありますが、現在の地域猫活動は地域によっても、個人によっても温度差があり、難しい状況です。
一方で、大田区全体の取組とは別に出張所によっては、地域紙への掲載や啓発イベントの開催など、独自の取組も行っております。
地域猫活動を周知し啓発を進める為に、区は来年度、地域、出張所単位での広報、啓発活動を強化していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
- 自殺対策
続きまして、毎度のことになってしまいますが自殺対策について伺います。
自分にとってはただの紙切れでも、誰かにとってはお守りかもしれない。
自殺対策とはそうした難しい課題へのあゆみ寄りの積み重ねなのかもしれません。
私事ですが、少し、お話をさせてください。
2月20日、家族が自ら命を絶ちました。
自殺対策を、子供の頃に家族を失った自死遺族であるとして、自殺対策を訴えてきた自分の身内から自殺者が出る。
自死遺族として自殺対策を頑張るんだと生意気なことを言っていた自分は、どんな顔をしていけばいいのか判らず、葬儀に行くことが出来ませんでした。
その体験をもとに、決意を新たに、自殺対策について質問をさせて頂きます。
②平成23年3月に策定した「おおた健康プラン」では、「区民一人ひとりが生涯を通
じて、健康で生きがいを持ち、安心して充実した生活を送ります」を理念として掲げ、
区全体で健康施策を積極的に展開してきました。
事項別明細書169ページをご覧ください。
今年度の予算でもおおた健康プランの調査の区民意識調査として671万7千円が計上されています。
平成26年3月に策定したおおた健康プラン第2次からも3年が経ち、時期プラン策定に向けて庁内でも検討が始まっていくと思います。
国の自殺対策基本法が改正され、自治体がそれぞれの地域の実情に応じた市町村自殺対策計画を策定する事を義務付けられました。
新たに策定するおおた健康プランと、区の自殺対策の関連について、お答えください
- 自殺未遂者支援
③先般公開された自殺総合対策協議会の概要の中でも、三次予防としての未遂者・遺族支援とあり、「自殺未遂者が受診しても胃洗浄や外科的治療のみの場合も多い。未遂者は、次は確実な方法を選び死亡することがある。自殺未遂行動をとった原因を考えるとともに、どのような支援を受けられれば生きる道を選択できるのか、背景の問題まで遡って支援できる状況を目指すべきである。」とありました。
昨年の決算特別委員会においても、私は「自殺未遂者が精神科のない病院に搬送された際、また窓口に精神疾患などの相談等があった場合など、精神科を始め必要な支援に繋げる為の連携を強化していくべきと考えます」と質問し、理事者より「救急窓口のある区内医療機関に働きかけてまいります。」と答弁があった所です。
この間、区はどのように取り組んできましたか?お答えください。
- 孤独死の男女比 対策の地域間連携
④タブレット端末に配信したデータをご覧ください。
平成22年12月に東京都監察医務院の出した、『東京23区における孤独死の実態』によると、平成18年では男性2362名、女性1033名が23区内で孤独死しています。
男性では45~49歳の年齢階級で孤独死は100件を超え、以降に急激に上昇し、60~64歳で404名にもなります。
女性は70歳未満では100名を超える年齢階級は存在せず、70歳以降で初めて100件を超える事と大きく異なります。
孤独死の死後発見のデータについて、平成18年では女性が6.5日と一週間を切っているのに比べ、男性は約12日間と、2週間近い日数を要することが明らかになっています。発見年数は年々伸びており、男女で発見される日数に倍近い開きがあることは注目に値します。
60代以下の現役世代で、様々なコミュニティとの関わり合いが強いのは、一般的に女性の方であると想像できる一方で、男性は孤独におちいると同時に無縁にもおちいる傾向が強い事が示唆されます。
男性の平均である、発見が死後12日経ってから・・・どういう事だと皆様お考えになりますか?
非常に残念なことですが、ご遺体の臭いや住居の投函物が溢れかえるなどの理由でようやく気づかれるケースであろうと想像できます。
今まで、どんな人生を送って来たんだろう?
そこで暮らしていたのだろう?
どんな夢を持ち、笑い合っていたのだろう?
そんな人生をあざ笑うかのように、亡くなってからも何日もずっと誰にも見つけてもらえずに、一人、孤独に。
社会全体として、こうした悲劇は減らしていかなければなりません。
定年後の男性の孤独死件数が急上昇することからも、男性は労働以外で社会との結びつきを持つことが苦手であり、仕事のリタイアと同時に孤立におちいってしまう現状が想像できます。
先ほど、渡司委員から両親学級についての御話がありましたが、現役世代の社会参加の支援について、区はどのように考えますか?
⑤続けて現役世代の地域・社会参加の場といった点について触れさせていただきます。
H22年に決定された国のスポーツ立国戦略においても、若者をはじめとした成人スポーツ参加の促進が掲げられました。これは、スポーツ実施率の低い世代のスポーツ活動を向上させることを目的に、スポーツを通じて若者が交流の場を設けることを支援するものです。
区外から転居してきた方々や、今まで地域と縁遠かった方に、いきなり町会・自治会などを始めとする地域団体に参加を・・と言ってもハードルが高いものです。
まずスポーツや文化交流、また出会いの場の提供といった点から、趣味や活動を通し現役世代の地域参加を促していく事も大事ではないでしょうか?
先ほど、孤独死・孤立の話に触れました。
若者、現役世代の社会参加の支援はこうした問題をはじめとする様々な社会問題に対する社会的コストの低減にもつながっていきます。
運営についても、場の提供、環境の醸成といった側面支援に止める事により、多額の委託費の抑制にもつながり、民間の自由な発想が活かされやすくもなります。
スポーツをツールとして捉え、現役世代の交流支援を始めとする多世代にわたる交流についての区の考えをお聞かせください。
- 孤立と男性、女性の自殺の相関
⑥経済的、社会的に困難な状態に陥った男性の抱えるリスクの問題は、区内の自殺問題にも関係があると言えます。
平成21年~26年 大田区内全自殺者数865名のうち、男性612名、女性253名となっており、特に20代~60代は全ての年代で男性自殺者は女性の倍以上です。
同居人ありの方と同居人無しの方でも自殺者に男女の差が明確に出ており、年齢別でみると、同居人ありの場合が20代から60代まででは1・5倍から2倍の開きであるのに対し、同居人無しでは20代で男性が7倍、30代で2倍、40代で8倍、50代で10倍、60代で3倍となっています。
孤独を抱えた、あるいは社会的に重圧を負いながら、周囲に相談をしづらい立場の方は男女ともに多くありますが、特に男性に顕著なのだと思います。
このような同居人の有無による自殺リスクの差が見られることからもわかるように、家庭・交友・恋愛などを含む社会参加も自殺問題に深く関わっています。
社会参加の面からも総合的な自殺対策を進めるための調査・研究が必要です。
見解をお伺いいたします。
ありがとうございました。
祖母は農薬を飲んで自殺を図りました。
介護疲れ、老老介護。
よくある話だと思います。
今後も大田区だけでなく、日本全体で自殺対策を進めていく為に、まずはこの大田区から自殺対策の前進を訴えていきたいと表明し、質問を終えます。
不思議な話ですが、2015年9月に議会で自死遺族である事を明かして以降、自死遺族、自殺の話が沢山、私の元に届くようになりました。
まさか自身の家族の死という形で届くとは、思いもよりませんでしたがそうした遺族の無念や悲しみを少しでも受け止め続ける事が、私に与えられた使命なのかもしれません。
今後も、自ら命を絶ってしまった、私の家族たちの為にも精一杯、声を上げていきたいと思います。
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